ABSTRACT 347(6-1)
ルイス式血液型を決定するLewis遺伝子型が、肺癌患者予後(特に扁平上皮肺癌)に大きく影響する:成松 久 1,岩崎裕子 1, 栂谷内晶1, 足立匡司2, 三宅正幸2 (1創価大・生命研・細胞生物, 2北野病院・胸部外科・第5研究部)
Influence of Lewis genotype on prognosis of patients with non-small cell lung cancer : Hisashi NARIMATSU1,Hiroko IWASAKI 1,Akira TOGAYACHI1,Masashi ADACHI 2,Masayuki MIYAKE 2 (1Inst.Life Sci. Soka Univ., 2Dept. Thorac.Surg., Dept. V., Kitano Hospital)
(目的)5種類のa1,3フコース転移酵素(Fuc-T)のうち、非小細胞肺癌においては主にFuc-TIIIが発現しており、癌組織のsLex量を決定していることが判明した。(但し、Fuc-TVIも少しはsLex合成に寄与している。)Fuc-TIII (Le) 遺伝子には、遺伝的多型性があり、null Fuc-TIII (le) 遺伝子のホモ接合体(le/le)は日本人では約10%である。le/le個体は、ルイス式血液型はLe(a-,b-)であり、全身諸臓器において1型ルイス抗原(Lea, Leb, sLea)を合成できない。le/le 個体由来の非小細胞肺癌組織は、Fuc-TIII酵素を欠損するため、sLea抗原は全く発現していないし、sLex量もごく微量である。もし、sLea, sLex が肺癌患者の予後に影響を与えるとすれば、Fuc-TIII (Le)遺伝子型がそれを大きく左右することになる。(方法と結果)肺癌患者270例を集め、そのDNAからLe, Se 遺伝子の型を決定した。Le/Le, Le/le, le/le, Se/Se, Se/se, se/seの遺伝子型に分類した。Se 遺伝子型は患者予後に何ら影響を与えなかった。Le遺伝子型は、特に扁平上皮癌において、le/le 患者の方が、Le/-患者より悪い予後を示した(P<0.0001)。肺癌においては、sLex抗原量が少ないほうが予後が悪いことを示唆した。