ABSTRACT 351(6-2)
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胃癌細胞HSC-39におけるγ-catenin異常に基づくE-cadherin細胞接着および増殖抑制の障害:長岡康裕,加藤淳二,瀧本理修,照井 健,新津洋司郎(札幌医大・医・四内)

Impairment of E-cadherin-dependent cell adhesion and contact inhibition due to abnormality of γ-catenin in gastric cancer cell line HSC-39 : Yasuhiro NAGAOKA, Junji KATO, Rishu TAKIMOTO, Takeshi TERUI, Yoshiro NIITSU (4th Dept. Int. Med., Sapporo Med. Univ. Sch. Med.)

(目的)E-cadherin (EC) の裏打ち蛋白であるbeta-cateninは、核内移行して増殖シグナルを伝達する機能も有しており、その異常は細胞接着 (EC機能) のみならず増殖能にも影響を及ぼす。一方、γ-cateninはβ-cateninと相同性を有しやはりEC機能に重要であると推定されているが、その詳細な機能は明らかでない。我々は昨年の本学会で、変異β-cateninを発現し接着を示さないスキルス胃癌細胞HSC-39と、そこから分離したEC依存性の接着を示す亜株HSC-39Adを比較した所、後者でγ-catenin-APC複合体とp21(WAF1)の発現が増強しており、さらに増殖能も低下していることを見出し報告した。今回、同細胞で作働しているECによる細胞接着が実際にgamma-cateninを介して増殖を制御していることを見出したので報告する。(方法)EC、catenins及びAPC-catenin複合体の発現は、免疫沈降法及びwestern blot法で検討した。HECD-1、APC及びγ-cateninに対するantisense S-oligo添加時の細胞増殖能の変化は、MTT assayで検討した。(結果)HSC-39Adでは、増加したAPC-γ-catenin複合体にECが共沈された。HECD-1抗体、APC及びgamma-catenin antisense処理により増殖は有意に増加し、細胞乖離がみられた。(結論)EC依存性細胞接着には、EC-γ-catenin-APC複合体の形成が必要であり、逆に親株ではγ-cateninの異常のために同複合体の形成が障害され、細胞増殖が促進されている可能性が考えられた。