ABSTRACT 354(6-2)
大腸・直腸癌患者の糞便から分離した細胞における CD44 mRNA の異常発現の検出:
山尾剛一1、松村保広2、島田安博2、森谷宣皓3、垣添忠生4(1癌研・病・内、国立がんセ・中央病・2内、3外、4泌)
Abnormal expression of CD44 variant exons in the exfoliated cells isolated from feces of the patients with colorectal cancer: Takekazu YAMAO1, Yasuhiro MATSUMURA2, Yasuhiro SHIMADA2, Yoshihiro MORIYA3, Tadao KAKIZOE4 (1Dept. of Med., Cancer Inst. Hosp., Dept. of 2Med.3Surg. and 4Urol., Natl. Cancer Ctr. Hosp.)
【目的】接着因子CD44は、大腸癌の進展・転移に関与していることが報告されている。我々は、大腸・直腸癌患者の糞便から細胞成分を分離し、その中に含まれる微量な癌細胞におけるCD44変異体の異常発現を、RT-PCR-Southern blot法で検出する方法を試みた。
【方法】大腸・直腸癌患者25例 (大腸癌13例・直腸癌12例)の原発巣切除前後、および健常者15名の糞便約5.0gから分離した細胞成分からmRNAを抽出し、RT-PCR-Southern blot法を行い、CD44 standard(CD44s),v6,v10の発現を、各々のexon specific cDNA probeを用いて検出した。
【結果】全ての検体から、mRNAの抽出が可能であった。CD44sの発現は全ての検体で検出された。大腸・直腸癌患者の原発巣切除前の検体での v6、v10の発現は、各々17例 (68%), 15例 (60%)で検出された。一方、原発巣切除後の検体での v6、v10の発現は、各々3例 (12%), 5例 (20%)において検出された。また、原発巣切除前の検体で v6、v10の発現が検出された患者のうち、各々v6:15例(88%)、v10: 12例(80%)において、原発巣切除後にはそれらが検出されなかった。臨床病期 (Dukes stage)、組織型と v6、v10の検出頻度との間に関連を認めなかったが、腫瘍の部位別では直腸・S状結腸において他部位よりもv6, v10の検出頻度が高かった(v6: 78% vs 33%; v10: 68% vs 33%)。健常者においては、1名 (6.6%)にのみ v6, v10が検出された。