ABSTRACT 355(6-2)
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腸管粘膜浸潤型ATL細胞に発現する接着分子の同定と機構解析:堀利行1、陳惠君、前田道之、内山卓1,3京大・ウイルス研、京大・再生医科学研、3京大・医・血液病態)

Identification and functional analysis of an adhesion molecule expressed on ATL cells derived from a patient with infiltration into intestinal mucosa.: Toshiyuki HORI1, Huijun Chen1, Michiyuki MAEDA2 and Takashi UCHIYAMA1,3 (1Inst.Virus Res.,2 Inst. Regen. Med. Sci., 3Facu. Med., Dept. Hematol., Kyoto Univ.)

【目的】ATLにおいてしばしば腸管への腫瘍細胞の浸潤が認められるが、その分子機構に関する報告はない。そこで、腸管粘膜浸潤を示したATL患者より樹立された細胞株を用いてこのような浸潤に関与する可能性のある接着分子の同定を試みた。【方法と結果】腸管粘膜下浸潤を示したATL患者由来の細胞株ATL43Tでマウスを免疫してこの細胞に強く発現する抗原を特異的に認識するモノクローナル抗体H920(IgG1)を樹立した。これを用いた免疫沈降の結果、抗原分子の分子量は約120 kDと推定された。COS-7細胞での一過性発現系とH920抗体による細胞選択により抗原分子の遺伝子クローニングを行ったところintegrinβ7と同一であることが判明した。そこでヒトMAdCAM-1 cDNAをマウス上皮細胞株MMCEに導入したstable transfectantを樹立して、ATL43T細胞との間の細胞接着実験を行った。ATL43T細胞は親株であるMMCEには殆ど接着しなかったが、このMAdCAM-1 transfectantに対して強い接着を示し、また、この接着は、H920抗体の添加によって濃度依存性に抑制された。【考察】腸管粘膜浸潤型ATL由来の細胞株がintegrinβ7を強発現し、MAdCAM-1発現細胞に特異的に接着したことから、ATL細胞の腸管浸潤にこれらの分子が関与する可能性が示唆された。