ABSTRACT 356(6-2)
一酸化窒素による扁平上皮癌の細胞接着分子発現誘導:豊島貴彦、上條竜太郎、滝沢邦生、羽鳥仁志、南雲正男(昭和大・歯・2口外)
Effect of nitric oxide on ICAM-1 expression on cancer cells:Takahiko TOYOSHIMA, Ryutaro KAMIJO, Kunio TAKIZAWA, Masashi HATORI, Masao NAGUMO (2nd Dept. of Oral & Maxillofac. Surg., Sch. of Dent., Showa Univ.)
一酸化窒素(nitric oxide:NO)は主として活性化されたマクロファージが産生するラジカルであり、癌細胞傷害活性をはじめ、生体内で多彩な作用を有することが知られている。そこで我々は、NOが癌細胞のICAM-1の発現誘導におよぼす効果について検討するため、扁平上皮癌細胞株NAをNO供与体であるsodium nitroprusside (SNP)で処理し、NA細胞のICAM-1の発現レベルをflow cytometryにより解析した。その結果、SNPによりNA細胞のICAM-1の発現が速やかに誘導された。gel shift assayの結果、NA細胞をSNPで処理するとNF-kBの誘導が増強された。また、NOによるICAM-1の発現はgenistein [tyrosine protein kinase (PTK)阻害剤]により阻害されたが、staurosporine (protein kinase C 阻害剤)では阻害されなかった。以上より、NOが癌細胞のICAM-1の発現を誘導すること、その作用にはNF-kBおよびPTKが関与していることが示唆された。ICAM-1はTリンパ球のLFA-1と結合し、Tリンパ球の細胞傷害活性を誘導することから、NOは癌細胞を直接傷害するほか、ICAM-1の発現誘導を通してTリンパ球の癌細胞傷害活性を誘導する可能性が示唆された。