ABSTRACT 385(7-3)
骨髄転移性ミエロ−マの内皮細胞への接着、浸潤における接着分子の役割:岡田知子,奥野洋明(工技院・生命研)
Role of CD44 and VCAM-1 involved in the adhesion and invasion by bone marrow metastatic myeloma cells to endothelial cells : Tomoko OKADA, Hiroaki OKUNO (Natl. Inst. Biosci. Human-Tech, AIST)
【目的】血液系の腫瘍は高頻度で骨髄に転移するが、骨髄転移メカニズムの解明は非常に遅れている。そこでこの機構を解明することを目的とし、骨髄転移性ミエロ−マとマウス骨髄から単離した内皮細胞との相互作用を、接着分子(主にCD44およびVCAM-1)の役割に注目して解析した。【方法】骨髄転移性ミエロ−マは、IL-6依存性でIL-1産生能を遺伝的に付加し、マウスに静脈内投与してその骨髄から得た高転移性クローンB9/BM1を用いた。骨髄由来内皮細胞はBalb/cマウスの大腿骨から単離・同定した。接着の測定は癌細胞をBCECF-AMで蛍光標識し、内皮細胞monolayerに加えて37度で1時間培養し、洗浄後マイクロプレートリーダーにて測定した。浸潤の測定はFNコートしたpolycarbonate膜上に内皮細胞を一層に培養し、この上に癌細胞を加えて18時間培養して、内皮細胞間隙と膜の穴とを通り抜けた癌細胞の数を計測した。【結果】高転移性ミエロ−マB9/BM1の骨髄由来内皮細胞に対する接着及び内皮細胞間隙への浸潤は、抗CD44抗体によって強く阻害された。CD44はミエロ−マと内皮細胞の両方に発現しているが、抗体の効果は内皮細胞を処理した時により大きく発揮された。また培地にヒアルロン酸を共存させると濃度依存的に接着が抑制された。一方内皮細胞をTNFアルファで刺激すると、内皮細胞上の VCAM-1の発現量が増加し、この時ミエローマの浸潤能は顕著に上昇した。さらにこの上昇は抗VCAM-1抗体によって強く抑制された。【考察】骨髄転移性ミエローマと骨髄由来内皮細胞との相互作用において、内皮細胞上のCD44及び VCAM-1が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。