ABSTRACT 388(7-3)
ホメオボックス遺伝子HOXD3導入によるヒト癌細胞のインテグリンの発現と細胞運動性の変化:尾松徳彦1、浜田淳一1、古内恵司1、高橋葉子1、大久保佳子1、細川眞澄男2、白土博樹3、宮坂和男3、谷口泰史4、守内哲也1(北大・医・1癌研細胞制御、2癌研病理、3放射線科、4東海大・医・分生)
Alteration of integrin expression and cell motility of human cancer cells by transfection with homeobox gene HOXD3 : Tokuhiko OMATSU1, Jun-ichi HAMADA1, Keiji FURUUCHI1, Yoko TAKAHASHI1, Yoshiko OKUBO1, Masuo HOSOKAWA2, Hiroki SHIRATO3, Kazuo MIYASAKA3, Yasushi TANIGUCHI4, Tetsuya MORIUCHI1 (1Div. Cell Biol., 2Div. Pathol., Cancer Inst., 3Dept. Radiol., Hokkaido Univ. Sch. Med., 4Div. Mol. Life Sci., Tokai Univ. Sch. Med.)
【目的】癌の転移・浸潤は、細胞のもつ固有の位置情報の異常と捉えることができる。細胞の位置情報を担う遺伝子にホメオボックス遺伝子が挙げられる。今回、ホメオボックス遺伝子HOXD3をヒト癌細胞に導入、強制発現させ、インテグリンの発現と癌細胞の運動性について調べた。
【方法と結果】ヒト肺癌細胞株(A549)およびヒト乳癌細胞株(MCF-7)にHOXD3のセンス遺伝子発現ベクターあるいはネオマイシン耐性遺伝子(neo)のみの発現ベクターを導入し、各導入株から細胞クローンを得た。A549細胞にHOXD3を過剰発現させると、インテグリンβ3の発現増強がみられた。A549親細胞およびneo発現クローンのフィブロネクチン(FN)に対する遊走性は、抗インテグリンβ1抗体処理で完全に抑制されたのに対し、HOXD3過剰発現クローンのそれは抗インテグリンβ1抗体あるいは抗インテグリンαvβ3抗体処理で半減した。一方、MCF-7細胞にHOXD3を強制発現させても、インテグリンβ3の発現は観察されなかった。また、MCF-7細胞のFNに対する遊走性は、HOXD3を強制発現させると著しく低下した。
【考察】HOXD3の強制・過剰発現は、インテグリンβ1依存性の細胞運動を抑制し、細胞運動をインテグリンβ3依存性にスイッチングすることを示唆する結果が得られた。