ABSTRACT 393(7-3)
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Tsc2変異ラット(Eker rat)の腎癌細胞に特異的に発現しているErc遺伝子の 機能解析:山下与企彦, 織本健司, 福田智一, 小林敏之, 樋野興夫(癌研・研・実験病理)

Functional analysis of Erc gene expressed in renal cell carcinoma of Tsc2 mutant (Eker) rat model. Yokihiko YAMASHITA, Kenji ORIMOTO, Tomokazu FUKUDA, Toshiyuki KOBAYASHI, Okio HINO (Dept. of Experimental Pathology, Cancer Institute)

【目的】我々は遺伝性腎癌ラット(Eker rat)の原因遺伝子がTsc2遺伝子のrat homologueであることを明らかにしてきた(Nature Genetics9:70-75, 1995)。さらに、その原因遺伝子が癌抑制遺伝子で、且つ転写活性化能を有することを明らかにした(Cancer Res., 56:429-433, 1996)。次に我々はRDA変法によるcDNAサブトラクションを行い、腎癌細胞で特異的に発現している新規の遺伝子(Expressed in Renal Carcinoma;Erc)を単離し、cDNAの全塩基配列を決定した。その結果、Erc遺伝子は最近ヒト卵巣癌の細胞株より単離されたmesothelinと高い相同性が認められた。今回、我々はErc遺伝子をErc遺伝子の発現していないラット腎癌細胞へ導入し、安定形質転換細胞株を樹立し、in vitro、in vivoにおける機能解析を試みた。
【方法・結果】Erc遺伝子発現ベクターをリポフェクション法によりErc遺伝子非発現腎癌細胞(LK9dL)へ導入し、安定形質転換細胞株を樹立した。Erc遺伝子強発現細胞株ではin vitroにおいて接着性ならびに増殖速度の亢進が認められた。さらにnude mouseを用いた腫瘍移植実験では、逆に増殖速度の有意な低下が認められ、興味あることに組織学的にマウスの5匹中3匹に血管増生・拡張が認められた。
【考察】Erc遺伝子は細胞接着因子としての機能、さらに血管新生に関与する可能性が示唆された。