ABSTRACT 434(8-2)
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発癌感受性DonryuラットのT細胞の反応性の低下はPKCの異常な活性化によりもたらされる:
山下優毅、三瀬節子、杉浦勉(産業医大・医・免疫)

Reduced T cell function of carcinogen-sensitive Donryu rats is induced by chronic activation of PKC :
Uki YAMASHITA, Setsuko MISE, Tsutomu SUGIURA (Dept. Immunol., Univ. Occup. Environ. Health)

[目的]発癌高感受性であるDonryuラットはこれを親株として得た発癌抵抗性のDRHラットに比べT細胞の機能が著しく低下していることを前回の本学会で報告した。今回、我々は、DonryuラットのT細胞の機能低下がいかなる要因によりもたらせるかを検討した。
[結果](1)mitogen及び抗CD3抗体刺激による脾細胞の増殖反応を比較すると、DonryuラットはDRHラットに比べ著しく低下していたが、PKCの活性化剤であるPMAとCaイオノフォアによる刺激では両者の増殖反応には違いが見られなかった。また、DonryuラットではCaイオノフォア単独でも増殖反応が誘導された。(2)DonryuラットはDRHラットに比べてCD4及びCD8の発現量が低下していたが、PMA処理により両ラットともCD4の発現量の低下が見られた。(3)Donryuラットの静止T細胞では膜分画に存在するPKCがDRHラットに比べ多く、より活性化した状態であった。(4)CD4分子と会合しているチロシンキナーゼlck分子はDonryuラットで発現量が減少していた。また、DRHラットではPMA処理によりlckのセリンリン酸化と発現量の減少が見られた。(5)DonryuラットではCon A刺激直後の細胞内のチロシンリン酸化が正常に起こらなかった。同様に刺激直後に小胞体から放出されるCa量も減少していた。
[結論]DonryuラットのT細胞はPKCが常に活性化した状態にあり、このことがシグナル伝達を担う分子を負に制御し、リセプターを介した刺激に対し正常に反応できない要因になっていると考えられた。