ABSTRACT 448(8-3)
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HLA-A*2402同種肺癌細胞株を認識する健常人由来細胞傷害性T細胞(CTL)の樹立:住本秀敏1,2,谷 憲三朗2,西條薫3,大野忠夫3,家城隆次4,木村彰方5,池田英之1,浅野茂隆2,河上裕11慶大・先端研・細胞情報,2東大医科研・病態薬理,3理化学研究所・ジーンバンク,4都立駒込病院・呼内,5東京医歯大・難治研・異常代謝)

Induction of CTL from a healthy donor against an allogeneic human lung cancer cell line : Hidetoshi SUMIMOTO1,2, Kenzaburo TANI2, Kaoru SAIJO3, Tadao OHNO3, Ryuji IEKI4, Akinori KIMURA5, Hideyuki IKEDA1, Shigetaka ASANO2 and Yutaka KAWAKAMI1 (1Div. of Cellular Signaling, Inst. for Advanced Med. Res., Keio Univ. Sch. of Med., 2Dept. of Hemato/Oncolo, Inst. of Med. Sci., Univ. of Tokyo, 3RIKEN GENE BANK, 4Metropolitan Komagome Hosp., 5Med. Res. Inst., Tokyo Med. and Dent. Univ.)

【目的】ヒト原発性肺癌に発現する共通腫瘍抗原を単離・同定する目的でヒト肺癌細胞株に対するCTLを誘導し、その性状を解析する。【方法】肺腺癌症例の胸水から樹立した腺癌細胞株K-1s (A*2402 B*5201B*5401Cw*01Cw*1202)を刺激細胞としてA24陽性健常成人の末梢血由来単核球からIL-1,IL-2,IL4,IL-6存在下にK-1sに対するCTLを誘導し,そのCTLの抗原認識特異性を各種標的細胞を用いて検討した。
【結果】CTLはCD8+ 97%, CD4+ 8%, CD3+ 98%, CD16+ 0.4%であり、培養開始後49日目の時点でK-1sに対して87%の特異的細胞傷害活性を示し(E/T=10/1,以下同様)、K562やDaudiではそれぞれ1.8%,2.2%であった。K-1sに対するCTL活性はW6/32抗体により約50%阻害された。このCTLはA*2402陽性の他の6種類の肺癌細胞株に対して全てK562より有意に高い細胞傷害活性を示した(14%-95%)。一方、A*2402陰性の7種類の肺癌細胞株では一株(75.2%)を除き全てK562と同程度またはそれ以下の細胞傷害活性を示した。A*2402陽性のメラノーマに対しては一株でK-1sと同程度の細胞傷害活性を示したが、他の2株とA*2402陰性メラノーマ2株は傷害しなかった。また、CTLドナー由来のEBV形質転換B細胞に対しては18.8%の活性を示した。
【結論】健常人末梢血よりHLA-A*2402同種肺癌細胞株を認識する強力なCTLが誘導できた。このCTLはA*2402拘束性である可能性が高いがCTLクローンでの解析が必要である。また、このCTLに反応したA*2402陰性肺癌細胞株はK-1sともCTLドナーとも共通するMHCを持たないのでCTLがアロMHC抗原を認識した可能性も考えられる。以上よりこのCTLは、肺癌および一部のメラノーマに共通する腫瘍抗原を特異的に認識している可能性が高く、抗原の単離に有用と考えられる。