ABSTRACT 0518(10)
H.pyloriの除菌治療による腸上皮化生の可逆性の検討:松倉則夫1、恩田昌彦1、加藤俊二1、長谷川博一1、吉行俊郎1、徳永 昭1、山下精彦1、山田宣孝2(1日本医大・1外, 2日本医大・2病)
Reversibility of intestinal metaplasia in the stomach after eradication of H.pylori: Norio MATSUKURA1, Masahiko ONDA1, Shunji KATO1, Hirokazu HASEGAWA1, Toshiro YOSHIYUKI1, Akira TOKUNAGA1, Kiyohiko YAMASHITA1, Nobutaka YAMADA2 (11st Dept. of Surg. And 22nd Dept. of Pathol., Nippon Med. School,)
【目的】H.pylori感染は胃粘膜の萎縮を起こすことが動物の感染実験で報告されている。胃の腸上皮化生はepigeneticな変化で惹起されている可能性があり、腸上皮化生が可逆性であるか否かは重要な問題である。H.pyloriの除菌治療で化生がreverseするか検討した。
【対象・方法】H.pylori陽性で既報のごとく除菌治療(松倉他、日消誌94,569,1997)を行いH.pyloriが陰性化した、消化性潰瘍患者20例(男18、平均年齢46.5歳、胃潰瘍13)に除菌前、判定時、6ヶ月後、1年後に、幽門大弯、胃体上部大弯、胃角小弯の3点生検を施行し、組織学的にSydney Systemで腸上皮化生を含む5つのパラメーターを4段階に半定量した。
【結果】除菌前に腸上皮化生が認められた症例での1年後の変化は、幽門部大弯で減少2/5(40%)、無変化2/5(40%)、増加1/5(20%)、胃体上部大弯で減少0,無変化1/2、増加1/2、胃角小弯で減少3/8(38%)、無変化4/8(50%)、増加1/8(12%)で、除菌前腸上皮化生の認められなかった11症例は全例無変化であった。特に胃角小弯で減少の3例は3段階(中等度)の化生変化(不完全型腸上皮化生)が消失した。
【考察】H.pyloriの除菌治療後1年間の観察で、特に胃角部でsporadicな腸上皮化生(不完全型)が可逆性である可能性が示された。また、随伴する慢性活動性胃炎は全例で短期間に非活動性に変化しており、H.pyloriの除菌治療により胃発がんの高危険粘膜を可逆的に変化させ、胃がん発生の減少に結び付けられる可能性がある。