ABSTRACT 0519(10)
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肝細胞癌における転写因子YB1の発現に関する免疫組織化学的検討:田口健一1,2,島田光生2,大賀丈史2,3,桑野信彦3,杉町圭蔵2,恒吉正澄11九大・医・二病理,2九大・医・二外科,3九大・医・一生化)

Immunohistochemical study of transcription factor YB-1 expression in hepatocellular carcinoma: Ken-ichi TAGUCHI1,2, Mitsuo SHIMADA2, Takefumi OHGA2,3, Nobuhiko KUWANO3, Keizo SUGIMACHI2, Masazumi TSUNEYOSHI 1(1 2nd Dept. Pathol. Kyushu Univ. Sch. Med., 2 2nd Dept. Surgery, Kyushu Univ. Sch. Med., 3 1st Dept. Biochem. Kyushu Univ. Sch. Med. )

【目的】Y-box binding proteinは細菌から人まで広く存在する蛋白であり,転写,翻訳の制御に関与していることが報告されている.ヒトではYB1と呼ばれ,一般的には細胞増殖,薬剤耐性に関与している.今回,ヒト肝細胞癌におけるYB1の発現及びその形式を検討した.【方法】対象は九州大学第二病理学教室に収集された正常肝6例,慢性肝炎6例,肝硬変5例,胎児肝5例, 肝細胞癌77例で,九州大学第一生化学教室より供与された抗YB1抗体(CANCER RESEARCH 56, 1996)を用いて免疫染色を施行し,組織学的に検討した.【結果】YB1は非癌組織では肝細胞細胞質にhomogenousに発現していた.胎児肝では成人正常肝細胞よりもやや強く発現していた.肝障害が存在すると, 細胞質に強発現する肝細胞を散在性かつ孤在性に小葉内で認めた.これら非癌肝細胞では, YB1の肝細胞核での発現は数例、しかも異なる小葉内に散在性に認めた。 YB1の発現が肝細胞癌では細胞質に周囲非癌肝細胞よりも強い発現がみられ(50/77:65%),腫瘍内の癌細胞の核内にもみられた(40/77:52%)。肝細胞癌の分化度と比較すると細胞質内での発現では、高中分化では癌細胞において瀰慢性に発現しているが、索構造が厚くなり、充実性に発育する低分化では、血洞に面するところでは、強く発現しているものの、腫瘍胞巣中心部では発現は減弱していた。【結論】肝臓におけるYB1の発現は肝細胞が障害されるに従い、細胞質での発現が増強する。癌細胞では更に発現が増強し、核内移行が多く認められ、癌化に際し、YB-1の発現及びその発現形式が変化することが示唆された。