ABSTRACT 0520(10)
3cm以下の末梢型肺腺癌における形態学的予後因子の解析:横瀬智之1,鈴木健司2,永井完治2,西脇裕2,向井清1.(1国立がんセ・研支所・臨床腫瘍病理、2国立がんセ・東病・呼吸器)
Analysis of histological prognostic fators in peripheral lung adenocaricnoma less than 3 cm in diameter.: Tomoyuki YOKOSE1, Kenji SUZUKI2, Kanji NAGAI2, Yutaka NISHIWAKI2, Kiyoshi MUKAI1 (1Pathol. Div., NCCRIE, 2Div. of Thoracic. Oncol., NCCHE)
【目的】画像診断の発達により近年3cm以下の末梢型肺腺癌が増加し、手術によって完治しうる癌が増えてきている。3cm以下の腺癌の根治性を検討するため、従来からの予後因子に新たな形態学的因子を加え、臨床病理学的検討を行った。
【対象と方法】肺葉切除、リンパ節郭清により採取された100例の腺癌(1987-1992年)。HE、粘液、弾性線維染色を用い、各例とも最大割を含む3切片において新旧の形態学的因子を検討し、その結果と予後との関連を解析した。従来からの因子:腫瘍径、瘢痕度、核異型、核分裂数、脈管胸 膜侵襲、肺内転移、リンパ節転移、胸膜播種。 新たな因子:乳頭状構造、線維芽細胞増殖形態、壊死、虚脱線維化径、置換増生領域の率、肺胞弾性線維破壊、気管支ならびに血管周囲間質浸潤、粘液産生。【結果】腫瘍による弾性線維破 壊のない群(18例)、置換増生域75%以上の群(18例)、虚脱線維化巣径5mm以下の群(22例)においては死亡例は見られなかった。一方、リンパ節転移、血管侵襲、胸膜播種、核異型、核分裂数ならびに乳頭状構造、肺動脈周囲間質浸潤、壊死が有意な予後因子と考えられた(<0.05)。特に乳頭状構造の存在は置換型肺腺癌において予後不良な因子であった(P=0.01)。
【考察】置換型肺腺癌において5mm以下の虚脱線維化巣、75%以上の置換増生、または腫瘍による弾性線維破壊のない症例は純粋な細気管支肺胞上皮癌と同様に根治可能であると考えられる。一方、腺癌に乳頭状構造が見られる場合、その割合が低くても予後不良群と考えられる。