ABSTRACT 0525(10)
ヒト膵癌組織におけるhCG-βとleptin産生の検討:自見厚郎1、江里口直文2、船越顕博3(1久留米大・医・病理、2久留米大・医・外科、3九州がんセ・消内)
The production of hCG-β and leptin in human pancreatic cancer :Atsuo JIMI1, Naofumi ERIGUCHI2, Akihiro FUNAKOSHI3 (1Pathol. & 2Surgey, Kurume Univ., 3Gastroenterol., Natl. Kyushu Cancer Ctr.)
[目的]膵管癌は免疫組織学的にhCG-β産生が確認され、hCG-βが腎で分解され尿中に排泄されたUGPが臨床的に膵癌の約60%に陽性で腫瘍マーカー・予後推定因子として有用であることを報告した。肥満遺伝子の発現産物であるleptinは主として脂肪組織で確認されるが、最近絨毛の合胞体栄養膜細胞と羊膜での存在が明らかになった。本研究ではhCG-β産生膵癌組織におけるleptin産生について検討した。[方法]正常妊娠胎盤、絨毛性疾患(胞状奇胎、絨毛癌)を対照とし、外科的に切除された膵管癌18症例について検討した。[結果および考察]胎盤絨毛および胞状奇胎の細胞性栄養膜細胞はhCG-βとleptinは陰性で、合胞体栄養膜細胞が共に陽性だが、絨毛癌細胞ではhCG-βが陽性だった。膵癌ではhCG-β陽性は9例、leptin陽性は8例だが、leptin陽性はhCG-β陽性・陰性群間で有意差はなかった。また、連続切片で同一細胞によるhCG-βとleptinの同時産生は明らかでなかった。以上より、同一の細胞で産生される胎盤や絨毛性疾患と異なり、膵癌ではhCG-βとleptinはそれぞれ異なる細胞で産生されていることが示唆された。