ABSTRACT 0526(10)
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乳癌患者における血清可溶性Fas(sFas)の上昇とその意義:上野貴之,戸井雅和(都立駒込病院外科)

The significance of elevated soluble Fas levels in sera in breast cancer patients: Takayuki UENO, Masakazu TOI (Dept. of Surg., Tokyo Metropolitan Komagome Hosp.)

乳癌患者における、血清中可溶性Fas(sFas)濃度と臨床病理学的因子との関連を明らかにする。1991年から1997年まで都立駒込病院にて治療を受けた原発乳癌174例、再発乳癌71例と、健常者198例を対象とし、血清sFasをELISA法で測定した。健常者では男性1.72±0.96ng/ml(平均±SD)、女性0.91±0.90ng/mlと男性で有意に高値を示した。女性の平均±2SDを用い、カットオフ値は2.7ng/mlに設定した。原発乳癌では1.00±0.90ng/ml、再発乳癌では1.77±0.98ng/mlであり、ともに健常者に比べ有意に高値を示した(p<0.05, p<0.0001)。異常値の割合は、原発では3%であったが、再発では18%となっていた。再発群では、肝転移陽性例が陰性例に比べ有意に高値となっていた(2.49±1.44ng/ml,1.56±0.68ng/ml,p<0.05) 。再発例において生存率を調べると、sFas高値例は正常例に比べ有意に予後が悪かった ( p<0.0005, logrank)。sFasは、FasLと結合しその作用を阻止することで、腫瘍におけるimmune evasionの機構を担っている。今回乳癌患者、特に肝転移患者で高値となっており、癌の転移におけるsFasの重要性が示唆された。また、再発患者における予後因子として有用である。