ABSTRACT 591(12-5)
ヒトα-1-酸性糖蛋白による新規抗癌剤UCN-01のラット体内動態の変化: 布施英一1, 桑原隆1, 杉山雄一2 (1協和発酵・医薬総研, 2東大・薬)
Alteration of pharmacokinetics of a novel anticancer drug, UCN-01, in rats by human α-1-acid glycoprotein: Eiichi FUSE1, Takashi Kuwabara1, Yuichi Sugiyama2 (1Pharm. Res. Inst., Kyowa Hakko Kogyo, Fuc. Pharm. Sci., Univ. of Tokyo)
日米のPhase I試験においてUCN-01の血漿中濃度推移は実験動物に比べ顕著に高く,長い半減期を示した(1).その原因としてUCN-01のヒトα-1-酸性糖蛋白(ヒトAGP)に対する種特異的な高い親和性を有する結合が示唆されたことから,UCN-01のラットにおける体内動態に対するヒトAGPの影響について検討した.
ラットにヒトAGPおよびUCN-01等モル(730 nmol/kg)混合液投与時のUCN-01血漿中濃度は,UCN-01単独投与群に比べ著しく高値を示し,血漿コンパートメント分布容積,定常状態での分布容積,全身クリアランスは各々1/50,1/100,1/200に低下した.消失半減期は単独投与時の約2倍であった.
また,ラットにUCN-01を単独あるいはヒトAGPと同時に定速静脈内投与した時の定常状態での大腿部動脈血中の血漿中濃度および肝静脈血中の血漿中濃度より算出される肝抽出比はそれぞれ約0.5および0.03とヒトAGPによりUCN-01の肝抽出比は顕著に低下した.
以上の結果より,UCN-01とヒトAGPとの高い親和性がヒトにおける顕著に高い血漿中濃度推移の原因として強く示唆された.(1) Fuse, E., et al.: Proc. Am. Asso. Cancer Res., 39: 2482, 1998.