ABSTRACT 592(12-5)
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Cisplatinによる膀胱腫瘍細胞の抗Fas抗体に対する感受性の増強:水谷陽一、吉田 修(京大、医、泌)

Enhanced sensitivity of bladder cancer cells to anti-Fas monoclonal antibody by cisplatin : Youichi MIZUTANI, Osamu YOSHIDA ( Dept. of Urol., Fac. of Med., Kyoto Univ. )

(目的)リンパ球は1つにはFasを介して標的細胞を傷害する。抗Fas抗体はFasリガンドと同様、Fasを提示している細胞にアポト−シスを誘導する。また種々の抗癌剤は腫瘍細胞に対してアポト−シスを誘導する。そこで抗Fas抗体と化学療法剤とを併用することにより腫瘍細胞に対してアポト−シスをさらに増強できることが考えられる。今回アポト−シスを誘導する抗癌剤であるCisplatin ( CDDP )と抗Fas抗体とを併用することにより腫瘍細胞に対する細胞傷害活性が増強されるのかどうかを検討した。(方法)T24膀胱腫瘍株化細胞を標的細胞とした24時間のMTT試験にて細胞傷害活性を検討した。(結果と考察)CDDPと抗Fas抗体とを同時に併用したところ、相乗的な殺細胞効果が認められた。また膀胱腫瘍細胞の抗Fas抗体とCDDPとの処理の順序にかかわらず相乗的殺細胞効果が認められた。次にこの抗Fas抗体とCDDPとの組み合わせによる相乗的な殺細胞効果のメカニズムに関して検討した。T24細胞をCDDPで処理するとT24細胞上のFasの発現が増強された。抗Fas抗体とCDDPとの併用時におけるT24細胞のアポト−シスをアクリジン−オレンジ染色にて検討すると、抗Fas抗体単独またはCDDP単独処理に比較して、明らかにアポト−シスを起こしている細胞が増加していた。DNA ladder assayを用いても同様に抗Fas抗体とCDDPとの併用時におけるT24細胞のアポト−シスは抗Fas抗体単独またはCDDP単独処理に比較して増加していた。T24細胞を抗Fas抗体で処理するとCDDPの細胞内濃度が有意に上昇した。また、CDDP耐性因子の1つであるGlutathione S-transferase-πの発現はT24細胞の抗Fas抗体処理にて変化しなかった。以上の結果から、膀胱腫瘍に対して、CDDPと抗Fas抗体、または免疫療法との併用療法により、膀胱腫瘍細胞のCDDP耐性または免疫療法耐性が克服できる可能性が示唆された。