ABSTRACT 593(12-5)
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グルコース飢餓ストレスによる固形癌細胞のシスプラチン誘導アポトーシスへの高感受性化:冨田章弘1、蔡兵1、鶴尾隆1,2東大・分生研、2癌研・癌化療セ)

Sensitization of solid tumor cells to cisplatin-induced apoptosis by glucose-starved stress: Akihiro TOMIDA1, Bing CAI1, Takashi TSURUO1,2 (1Inst. Mol. Cell. Biosci. Univ. Tokyo, 1,2Cancer Chemother. Ctr., Jpn. Fdn. Cancer Res.)

固形癌内部では血管形成が異常なため、低酸素や低グルコース環境が形成されている。今回我々は、グルコース飢餓ストレスのシスプラチン感受性に及ぼす影響をアポトーシス誘導を指標として検討した。ヒト扁平上皮癌A431細胞は、シスプラチン10 microg/mlではアポトーシスを起こさなかったが、グルコース飢餓条件下ではアポトーシスに特徴的なsub-G1 population が12時間以内に出現しアポトーシスが誘導された。このとき、caspase-3の活性化、その細胞内基質であるPARPの切断が検出され、また、caspaseの選択的阻害剤Z-Aspによってアポトーシスの誘導が抑制された。このシスプラチン誘導のアポトーシスへの高感受性化は、ヒト大腸癌HT-29細胞においても観察され、細胞種に特異的な現象ではないことが明らかになった。一方、抗癌作用のない不活性な誘導体トランスプラチンやトポイソメラーゼII阻害剤エトポシドに対しては、このようなグルコース飢餓による高感受性化は見られなかった。グルコース飢餓状態は固形癌で一般に認められることから、グルコース飢餓によるシスプラチンに選択的な高感受性化は、シスプラチンの固形癌への有効性を説明するメカニズムとして示唆された。