ABSTRACT 596(12-5)
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concanamycin BによるEGF刺激A431細胞のアポトーシス誘導:吉本由哉,梅澤一夫,井本正哉(慶大・理工・応化)

Induction of apoptotic cell death by concanamycin B in EGF-stimulated A431 cells:Yuya YOSHIMOTO,Kazuo UMEZAWA,Masaya IMOTO(Dept.Applied Chem.,Fac.Sci.Tech., Keio Univ.)

[目的]上皮増殖因子受容体(EGFR)は、食道癌等の扁平上皮癌や脳腫瘍でその過剰発現がよく観察され、これらの細胞ではEGFによる刺激が癌化に深く関わっていると考えられる。そこで、EGFRを過剰発現した細胞をEGF刺激したときに、選択的に細胞死を誘導する物質は有用な抗癌剤になりうると考え、微生物二次代謝産物より探索を行った。
[方法及び結果]EGFRを過剰に発現しているヒト扁平上皮癌A431細胞にスクリーニングサンプルを添加し、30ng/mlのEGF で刺激したときの細胞死誘導能をMTT法により評価した。その結果、一放線菌培養液に活性が見出され、単離精製の結果、活性物質はV-ATPaseの阻害剤であるマクロライド系抗生物質concanamycin Bであることが判明した。concanamycin Bは1ng/ml〜1000ng/mlの濃度域ではA431細胞に細胞死を誘導しないが、A431細胞をEGFで刺激した場合にのみ細胞死を誘導した。又、Hoechst33258を用いた核染色からこの細胞死はアポトーシスであることが判明した。concanamycin Bと同様にV-ATPaseを阻害するbafilomycin A1もEGF刺激したA431細胞に選択的に細胞死を誘導した。しかし、F-ATPaseの阻害剤oligomycin、酸性イオノフォアnigericin、マクロライド系抗生物質leukomycinにはそのような活性は見られなかった。このことから、V-ATPase を阻害することによりEGFR過剰発現細胞に選択的に細胞死を誘導できる可能性が示唆された。