ABSTRACT 597(12-5)
 一般演題一覧 トップ 


Dolastatin10新規誘導体TZT-1027のヒト大腸癌由来WiDr細胞に対するアポトーシス誘導機構 : 渡邉一石1,2,見上崇2,河野通明11長崎大・薬・細胞制御,2帝国臓器製薬(株))

Studies on the mechanism of TZT-1027(a novel Dolastatin 10 derivative)-induced apoptosis in WiDr cells : Kazushi WATANABE1,2, Takashi MIKAMI2, Michiaki KOHNO1 (1Lab. of Cell Regulation, Sch. of Pharm. Sci., Nagasaki Univ., 2Teikoku Hormone)

【目的】Dolastatin10新規誘導体であるTZT-1027がチューブリン/微小管を主な分子標的として種々の癌細胞にアポトーシスを誘導することは既に報告したが,その作用機構の詳細に関しては不明な点が多い。そこで今回我々は,etoposideおよびtaxolによってはアポトーシスが誘導され難いヒト大腸癌由来WiDr細胞に対するTZT-1027の作用解析を通して,そのアポトーシス誘導に関わる分子を探索した。
【結果】TZT-1027は10-9M以上の濃度ではWiDr細胞に対して微小管の崩壊,低分子量G蛋白Rhoの細胞内局在性の変化,Raf-1,Bcl-2のリン酸化,およびcaspase-3様プロテアーゼの活性化を引き起こし,最終的にDNAのヌクレオソーム単位への切断およびアポトーシスに特徴的な核の濃縮,分断化を誘導した。TZT-1027は10-10M以下の濃度でもWiDr細胞に細胞死を誘導したが,ここでは微小管への影響を含めて上述した各変化の程度は低く,一方,特徴的にcdk inhibitor(p27KIP1)の発現誘導が顕著に認められた。すなわち10-10M以下のTZT-1027で処理した際にはp27KIP1による細胞周期の停止を介して細胞死が誘導される可能性が示唆された。
s【考察】TZT-1027は作用濃度によって細胞死誘導機構に差異が認められ,微小管の機能阻害の程度がその要因である可能性が示唆された。また,アポトーシス誘導過程において,細胞骨格制御分子が何らかの重要な役割を果たしている可能性が示唆されたため,Swiss3T3細胞をモデル細胞としてTZT-1027処理で誘導される形態変化に関わる分子を探索したので併せて報告する。