ABSTRACT 598(12-5)
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p36MBPキナーゼカスケードの活性化とアポトーシス誘導:長田裕之, 掛谷秀昭(理研・抗生物質)

Activation of p36 MBP kinase cascade and induction of apoptosis: Hiroyuki OSADA, Hideaki KAKEYA, (Antibiot. Lab. RIKEN)

【目的】近年、癌化学療法においてアポトーシス誘導の重要性が注目されている。我々が見出した抗腫瘍剤サイトトリエニンAが、アポトーシス誘導時にmyelin basic protein (MBP) をリン酸化する分子量約36kDaのMBPキナーゼ(p36MBPキナーゼ)を活性化することを見出した。今回、p36MBPキナーゼの活性化機構とアポトーシス誘導の相関性について報告する。
【方法、及び結果】ヒト白血病細胞HL-60において、サイトトリエニンAが誘導するp36MBPキナーゼの活性化の経時変化は、JNK/SAPK、p38MAPKの活性化のそれとは明らかに異なっていた。さらに、caspase阻害剤Z-Asp-CH2-DCBは、p36MBPキナーゼの活性化を抑制したが、JNK/SAPK、p38MAPKの活性化は抑制しなかった。この時、p36MBPキナーゼの活性化に伴い、分子量約60kDaのMST/KRSの量的減少が確認され、この減少はZ-Asp-CH2-DCBによって抑制された。caspaseによって切断されたMST/KRSのN末フラグメントの分子量は、p36MBPキナーゼとよい一致を見せた。また、サイトトリエニンAに対する感受性細胞と非感受性細胞においては、MST/KRSの発現に有意な差が見られた。以上の結果から、サイトトリエニンAはp36MBPキナーゼカスケードの活性化を伴って各種癌細胞にアポトーシスを誘導する可能性が示され、p36MBPキナーゼの活性化が癌化学療法における新しい分子標的となりうることが期待される。