ABSTRACT 599(12-5)
HL-60細胞におけるMT-21のアポトーシス誘導機構に関する研究:渡部正彦、掛谷秀昭、長田裕之(理研・抗生物質)
Mechanisms of apoptosis induced by MT-21 in human leukemia HL-60 cells: Masahiko WATABE, Hideaki KAKEYA, Hiroyuki OSADA (Antibiotics Lab., RIKEN)
【目的】我々はこれまでにヒト前骨髄性白血病細胞HL-60に対し顕著にアポトーシスを誘導する化合物MT-21 (3-acetyl-4,5-dimethyl-5-hydroxy-N-octyl-3-pyrrolin-2-one) を見出し、昨年の本学会で報告した。今回は、MT-21によるアポトーシス誘導機構の解明を目的とした。
【結果・考察】MT-21によるHL-60細胞のアポトーシス誘導過程において、活性酸素の産生、caspase-3の活性化、およびMBPを良い基質とする分子量約36 kDaのプロテインキナーゼ (p36MBP kinase) の著しい活性化が認められた。そこで、これらの変動とアポトーシス誘導との関連性を検討した。活性酸素種の消去剤であるN-acetylcysteine、あるいはα-tocopherolはMT-21によるcaspase-3、p36MBP kinaseの活性化、およびアポトーシス誘導を抑制した。またcaspase阻害剤はp36MBP kinaseの活性化、およびアポトーシス誘導を抑制した。様々な検討からp36MBP kinaseは、caspaseのプロテアーゼ活性により分子量約60 kDaのMST/Krsタンパク質から生じた分解産物 (約36 kDa) であり、caspaseにより切断されると強いリン酸化酵素活性を示すタンパク質であることが示唆された。以上の結果から、HL-60細胞においてMT-21は活性酸素の産生によるcaspaseの活性化を引き起こし、MST/Krsタンパク質を分解することにより活性化して、アポトーシスを誘導する経路が示唆された。