ABSTRACT 602(12-6)
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新規代謝拮抗剤 TAS-102 に関する研究:DNA 鎖上5-トリフルオロチミジンの DNA リガーゼ反応に及ぼす影響:佐竹弘靖1,鈴木則彦1,江村智博1,武田節夫1,山田雄次2,福島正和1(大鵬薬品・1第二がん研,2第一がん研)

A novel functional antitumor nucleoside, TAS-102. An usual effect of 5-trifluorothymidine in DNA on the DNA ligase reaction in vitro. Hiroyasu SATAKE1, Norihiko SUZUKI1, Tomohiro EMURA1, Setsuo TAKEDA1, Yuji YAMADA2, Masakazu FUKUSHIMA1 (1Cancer Res. Lab.-2, 2Cancer Res. Lab.-1, Taiho Pharm. Co., Ltd.)

[目的] TAS-102は5-トリフルオロチミジン(FTD)に、チミジンホスホリラーゼ阻害剤をモル比 1 : 0.5 で配合した新規経口抗腫瘍剤である。TAS-102はFTDが DNA に取り込まれることにより抗腫瘍効果を発揮し、5-FU 耐性、難治性腫瘍に対しても有効性を期待した薬剤である。我々は DNA に取り込まれた FTD の抗腫瘍作用機作のひとつとして DNA リガーゼ反応に及ぼす影響について検討した。 [方法] 合成オリゴヌクレオチドを用いた in vitro assay 系で行い、酵素は rh DNA ligase I を用いた。DNA リガーゼ反応阻害の有無は電気泳動により確認した。 [結果] ニック側に5-トリフルオロチミン(F3Thy)残基がある場合、DNA リガーゼ反応の阻害は認められなかった。しかし、鋳型側にF3Thy残基がある場合、DNA リガーゼ反応は阻害された。特にF3Thy残基から 5' 側に 1 塩基ずれた位置のニックのDNA リガーゼ反応は他の位置のニックに比し最も強く阻害された。また、このような阻害は 5-ブロモウラシル残基では観察されなかった。これらのことより、FTDにはこれまでの抗腫瘍剤にはない新しい作用機作を持つことが示された。また、作用機序の特徴から5-FU 耐性、難治性腫瘍にも有効性を示すことが期待された。