ABSTRACT 606(12-6)
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固形癌内部の生理的ストレスによって誘導されるプロテアソ−ムによるトポイソメラ−ゼIIαの分解:小木曽泰成1、冨田章弘1 ,金紅得1,鶴尾隆1,21東大・分生研,2癌研・癌化療セ)

Proteasome-mediated degradation of DNA topoisomerase IIα under physiological stress conditions in solid tumor : Yasunari OGISO1, Akihiro TOMIDA1, Hong-Duck KIM1, Takashi TSURUO1,2 (1Inst. Mol. Cell. Biosci. Univ. Tokyo, 1,2Cancer Chemother. Ctr., Jpn. Fdn. Cancer Res.)

固形癌では血管形成が異常なために、癌細胞は低酸素状態・栄養飢餓状態などの特殊な環境ストレスにさらされている。今回我々は、固形癌内部の生理的ストレスであるグルコース飢餓及び低酸素ストレスが抗癌剤の標的分子であるtopo IIαの発現に及ぼす影響を検討した。ヒト大腸癌HT-29細胞をグルコース飢餓、低酸素にさらすと、topo IIαの発現が低下し、このtopo IIαの発現低下はストレスによる細胞周期のG1期停止に依存して起こった。プロテアソ−ムの選択的阻害剤であるPSI、MG132あるいはMG115存在下では、この細胞周期依存的なtopo IIαの発現低下は抑制された。一方、プロテアソ−ムを阻害しないE64やZLLH などのプロテア−ゼ阻害剤は、topo IIαの分解を抑制しなかった。核内のプロテアソ−ム活性を測定したところ、グルコース飢餓ストレスで約3倍、低酸素ストレスで約2倍の活性上昇がみられ、その活性はプロテアソ−ム阻害剤で完全に抑えられた。また、核内のプロテアソームサブユニット(p27/p32)の発現量を調べたところ、活性の上昇と相関して発現量が増加することが明らかになった。以上より、固形癌内部の生理的ストレス環境下では、核内のプロテアソ−ムの発現・活性が増大し、topo IIαの分解が亢進されることが明らかになり、固形癌のtopo IIα標的抗癌剤の耐性の原因となることが示唆された。