ABSTRACT 611(12-6)
histone deacetylase inhibitorによる白血病分化誘導療法:小杉浩史1, 唐渡雅行1, 幡野その子1, 木下朝博1 , 谷本光音1, 村手隆1, 川島康平2, 直江知樹3, 齋藤英彦1(1名大・医・1内, 2名大・医・中央検査部, 3名大・医・難治感染治療部)
Differentiation induction therapy for leukemia by histone deacetylase inhibitors: 1Hiroshi KOSUGI, 1Masayuki TOWATARI, 1Sonoko HATANO, 1Tomohiro KINOSHITA, 1Mitsune TANIMOTO, 1Takashi MURATE, 2Kouhei KAWASHIMA, 3Tomoki NAOE, 1Hidehiko SAITO(1Dept. of the 1st Int. Med. Nagoya Univ. Sch. of Med., 2Div. of Hematology Clin. Lab., Nagoya Univ. Hosp., 3Dept. of Infectious Disease, Nagoya Univ. Hosp.)
【目的】histone acetylation/deacetylationが転写制御機構において中心的な役割を担っている証拠が相次いで報告されている。maturation arrestした造血系細胞において、histone deacetylase inhibitorによる転写抑制解除、分化阻害解除さらに分化誘導療法として臨床応用が可能か否かを検証するために、各種造血系細胞株、および白血病初期培養細胞を用いて検討したのでここに報告する。
【方法】各種造血系細胞株、および30例の白血病患者より得た初期培養細胞に対するhistone deacetylase inhibitor = Trichostatin A (TSA)、Trapoxin A (TPX) による分化誘導効果を検討した。
【結果】1) HEL, K562, TF1においてTSA、TPXによりerythroidへの分化を認めた。2) MEG-O1においてmegakaryoidへの分化を認めた。3) U937, HL60, NB4においてTSAおよびTPXと他の分化誘導剤との組み合わせによりmyeloidへの分化誘導とその増強効果を認めた。4) ATRA resistant subcloneである HL60/RA, NB4/RAにおいてTSA, TPXとATRAの組み合わせにより分化誘導可能であった。5) 急性骨髄性白血病M0~M7症例で分化誘導可能であった。
【結論】1) histone deacetylase inhibitor単独または他の分化誘導剤、cytokine等の併用で造血系3系統への分化誘導が可能であった。2) ATRA抵抗性細胞の分化誘導がhistone deacetylase inhibitorとATRAとの併用により可能である。3) histone deacetylase inhibitorの間には分化誘導効果に差があることが示唆された。4) 細胞株のみならず多くの白血病初期培養細胞においても分化誘導可能であり、histone deacetylase inhibitor単独または他の分化誘導剤との併用による分化誘導療法の臨床応用の可能性が示唆された。