ABSTRACT 649(15-2)
リンパ球中の異常APC蛋白質の検出による家族性大腸ポリポージスの遺伝子診断法:黒田敏彦1,2,武藤徹一郎2,正木忠彦2,森茂郎1,渡辺俊樹1(1東大・医科研・病理,2東大・医・腫瘍外)
Detection of truncated APC proteins in lymphocytes facilitates the molecular diagnosis of familial adenomatous polyposis: Toshihiko KURODA1,2, Tetsuichiro MUTO2, Tadahiko MASAKI2, Shigeo MORI1, Toshiki WATANABE1 (1Dept. of Pathol., Inst. Med. Sci., Univ. Tokyo, 2Dept. of Surg. Oncol., Univ. Tokyo)
【目的】APC(adenomatous polyposis coli)遺伝子の発見により家族性大腸ポリポージス(FAP)の遺伝子診断が可能となったが、従来の診断法は比較的複雑で、現状では広く臨床に普及しているとは言い難い。APC遺伝子の胚細胞変異はそのほとんどが異常な終止コドンを生じる変異であり、その結果短縮された異常APC蛋白質(truncated form;以下TF)がつくられることが報告されている。今回、我々はリンパ球に発現するTFをWestern blot法にて検出し、その分子量から異常終止コドンの位置を推定することにより、容易に胚細胞変異を同定することができたので報告する。【方法】APC蛋白質のN末端側の2箇所の異なる断片をGST融合蛋白として合成し、これを抗原として2種類の抗APCウサギポリクローナル抗体を作成した。これらの抗体を用いて、FAP症例9例の患者から得たリンパ球のWestern blotを行った。TFが検出された症例については、genomic DNAからのPCRを用いたdirect sequencing法でAPC遺伝子の胚細胞変異を同定した。【結果】TFは9例中6例(67%)に検出され、いずれの抗体でも同一の結果であった。これら6例全てにおいて、その分子量から予測される位置に胚細胞変異が検出された。その内訳は、ナンセンス変異3例、1塩基欠失1例、2塩基挿入1例、1塩基欠失と2塩基挿入の複合型1例で、いずれもすぐ近傍に異常終止コドンを生じていた。