ABSTRACT 651(15-2)
出芽酵母を用いたhMLH1遺伝子機能診断法の開発 : 下平秀樹、石岡千加史、金丸龍之介(東北大・加齢研・癌化学)
Functional analysis of hMLH1 gene mutations in Saccharomyces cerevisiae : Hideki SHIMODAIRA, Chikashi ISHIOKA, Ryunosuke KANAMARU (Dept. of Clinical Oncology, Inst. of Development, Aging and Cancer, Tohoku Univ.)
近年、遺伝子解析の技術は飛躍的に進歩し、癌関連遺伝子の構造異常が迅速に検出可能となった。しかし、検出されたミスセンス変異が遺伝子多型でなく疾患の原因となる変異かどうかを知るためには、その遺伝子の機能診断法の開発を待たねばならない。遺伝性ポリポーシス性大腸癌(HNPCC; hereditary nonpolyposis colorectal cancer ) の原因遺伝子の1つであるhMLH1は、報告された構造異常のうち30%がミスセンス変異であり、その機能診断の必要性は高い。我々は、これまでに出芽酵母に正常のhMLH1遺伝子を発現させると酵母の変異率が増加する現象、すなわちhMLH1のもつ酵母ミスマッチ修復系への競合性を認め、それがHNPCC患者において検出された変異をもつ場合の大部分では認められないことを報告してきた。さらにICG-HNPCC(Internationational collaborative group on HNPCC) に登録された大部分のミスセンス変異および遺伝子多型に関する検討を加え、本法の有用性を確かめた。HNPCC患者のリンパ球を用い実際に機能診断を行い、スクリーニング法としての応用性も示す。また酵母で発現させた正常および変異型hMLH1の蛋白量を検討し、競合性の生ずる機序を考察した。