ABSTRACT 653(15-2)
本邦のmultiple endocrine neoplasia type 2 (MEN 2)におけるRET遺伝子の変異型と表現型との関係の解析:二見仁康1, 江川新一1, 小原孝男2, 山口建1(1国立がんセ・研・細胞増殖因子, 2東京女子医大・内分泌外)
Genotype-phenotype correlation of the Japanese patients with MEN 2 : Hitoyasu FUTAMI1, Shin-ichi EGAWA1, Takao OBARA2, Ken YAMAGUCHI1 (1Growth Factor Div., Natl. Cancer Ctr. Res. Inst., 2Dept. of Endocrine Surg., Tokyo Women's Med. University)
【目的】MEN 2は甲状腺髄様がん(MTC)と副腎褐色細胞腫を合併し常染色体優性遺伝する腫瘍性疾患であり, RET遺伝子が本疾患の原因遺伝子であることが明らかにされている。今回, 本邦のMEN 2患者におけるRET遺伝子の変異型と表現型との関係を解析し, 変異型と悪性度との関連につき検討した。【対象と方法】 52家系のMEN 2患者67例(MEN 2A: 58例, MEN 2B: 4例, 家族性MTC: 1例, 家系内に3名以下のMTCのみを有する"other": 4例)の末梢血白血球より抽出したDNAを用い, 変異の検出は, PCR-SSCP法, 直接塩基配列法, 制限酵素法によった。表現型はMEN 2亜型, 初回甲状腺手術時の年齢, 手術時のMTC最大腫瘍径、及びリンパ節転移の有無について解析した。【結果】67例中65例に変異を認め, MEN 2Aはcodon 618, 634に, MEN 2Bは 634, 918に, 家族性MTCは 618に, "other"には 630, 634に変異を認めた。M918T変異型の3例は手術時平均年齢(11.7才)が他の変異型より低く, 内2例は手術時にリンパ節転移を認めた。また, C634R変異型の16例中, 腫瘍径が1 cm以下の6例にはリンパ節転移を認ず, 1 cmを越える10例の内8例にはリンパ節転移を認めた。C634Y変異型の14例において11例にリンパ節転移を認めたが, 腫瘍径とリンパ節転移の有無に相関は認めなかった。【結語】RET遺伝子の変異型により発症年齢及びMTCの進展度が異なり, 変異型は適切な手術時期の決定, リンパ節廓清, 及び予防的甲状腺摘除術の際の重要な情報になることが示唆された。