ABSTRACT 654(15-2)
 一般演題一覧 トップ 


Hirschsprung病を合併したMEN第2A型家系におけるRET proto-oncogeneの変異と臨床的意義:下竹孝志1、井上恭子1、岩井直躬1、阿部達生2、稲澤譲治3 (1京都府立医大・小児研・外1、2衛生、3東大・医科研・ヒトゲノム)

Mutational analysis of the RET proto-oncogene in a family with Hirschsprung's diseaese and MEN type 2A: Takashi SHIMOTAKE1, Kyoko INOUE1, Naomi IWAI1, Tatsuo ABE2, Johji INAZAWA3 (1Div. Surg., Child. Res. Hosp., 2Dept. Hygiene, Kyoto Pref. Univ. Med.3 Hum. Genome Res. Ctr., Inst. Med. Sci., Univ. Tokyo)

〔目的〕我々は、Hirschsprung病を合併したMEN第 2A型の一家系を経験し、家系の解析を行うとともにRET proto-oncogene の変異について検討したので報告する。〔方法〕発端例は当院でHirschsprung病根治術を施行した12歳女児である。本家系には母親を含め複数の甲状腺腫瘍患者が確認された。家系の構成員を調査し、家族の末梢血リンパ球よりDNAを抽出、RET proto-oncogene (10q11.2)のgermlineレベルでの変異をdirect seqence法にて検索した。〔結果〕本家系は4世代28名以上から構成され、少なくとも8名がHirschsprung病あるいはMEN第2A型を有していた。発症は常染色体優性遺伝形式をとり高い疾患浸透率を示した。RET mutationの検索では、exon 10, codon 618にmissense mutation (TGC→TCC; Cys→Ser)が認められたが、他のexon には変異は認められなかった。〔結果〕本家系ではRET遺伝子の変異(C618S)が、胎生期におけるneural crest 細胞の遊走障害であるHirschsprung病ならびに遺伝性発癌症候群であるMEN 第2A型という両疾患の発生に関与しているものと考えられた。これらの特徴を有するRETの変異パターンを明らかにすることにより、当該家系におけるhigh risk gene carrierの診断が可能となり、MEN第2A型に関連する腫瘍の早期治療とともにHirschsprung病の発生素因を予見出来るものと考えられた。