ABSTRACT 657(15-2)
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p53遺伝子導入によるVEGF及びBAI1発現制御 : p53癌遺伝子治療におけるBystander効果の機序 : 西崎正彦1, 藤原俊義1, 門脇嘉彦1, 深澤拓也1, 日伝晶夫1, 西森博幸2, 時野隆至2, 中村祐輔2, 田中紀章11岡山大・医・一外, 2東大・医科研・シークエンス解析)

Modulation of VEGF and BAI1 Expression by Wild-Type p53 gene transfer : Proposed Mechanism for Bystander Effect: Masahiko NISHIZAKI1, Toshiyoshi FUJIWARA1, Yoshihiko KADOWAKI1, Takuya FUKAZAWA1, Akio HIZUTA1, Hiroyuki NISHIMORI2, Takashi TOKINO2, Yusuke NAKAMURA2, Noriaki TANAKA1 (11st Dept. of Surg., Okayama Univ. Med. Sch., 2Lab. Mol. Med., Inst. Med. Sci., Univ. Tokyo)

[目的] 固形腫瘍の増殖には血管新生が必要であり、その制御に多くの液性因子が関与している。非小細胞肺癌細胞へのp53遺伝子導入による血管新生促進因子VEGF、及び、血管新生抑制因子BAI1(Brain-specific Angiogenesis Inhibitor 1)の発現変化を解析し、血管新生抑制を介した抗腫瘍効果について検討した。[結果] 非小細胞肺癌細胞H226Br(p53変異株)にアデノウイルスベクター(AdCMVp53)を用いて正常なp53遺伝子を過剰発現すると、mRNAレベルでVEGFの発現低下とBAI1の発現上昇が認められた。ヌードマウス皮下セルロース膜チャンバー法にてAdCMVp53感染細胞では、膜に接した皮下の血管新生抑制が観察された。また、ヌードマウス皮下にH226Br細胞とAdCMVp53感染H226Br細胞を混合して移植すると、形成される腫瘍体積の減少、及び、腫瘍内血管新生の抑制が観察され、AdCMVp53感染細胞による血管新生抑制が周囲の細胞に影響を与える、“bystander effect”が生じた。[考察] p53遺伝子導入による抗腫瘍効果に血管新生抑制が関与している可能性が示唆され、p53遺伝子治療は抗血管新生療法としても有用であると考えられた。