ABSTRACT 664(15-3)
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アデノウイルスによるCEA産生腫瘍に対する効率の良い標的遺伝子治療の開発:小西宏育1,2,落谷孝広1,武藤徹一郎2,杉村隆1,寺田雅昭11国立がんセ・研・分子腫瘍,2東大・医・一外)

Efficient and targeted adenovirus gene delivery to CEA- producing cancer:Hiroyasu KONISHI1,2,Takahiro OCHIYA1,Tetsuichiro MUTO2,Takashi SUGIMURA1,Masaaki TERADA1 (1Genetics Div., Natl. Cancer Ctr. Res. Inst.,2First Dept. of Surg., Sch. of Med., Univ. of Tokyo )

我々は腫瘍特異抗原を標的とする癌の標的遺伝子治療法の戦略を開発している。昨年の本総会でCEAに対する一本鎖抗体をマウス白血病レトロウイルス由来のエンベロープ遺伝子に組み込んだレトロウイルスベクターの開発について報告したが、この方法の最大の問題点は遺伝子の導入効率が低いことであった。この点を解決すべく、遺伝子導入効率の高いアデノウイルスを用いてCEAに対する標的アデノウイルスを開発した。アデノウイルスの感染はアデノウイルスのファイバーノブが細胞表面の受容体(CAR)に接着したのち、ペントンベースと細胞表面のインテグリンが結合して細胞内に入るという2段階の過程を経る。ノブに対する一本鎖抗体をアデノウイルスに結合させてから感染させると、細胞への感染が抑制された。そこで、このノブに対する一本鎖抗体とCEAに対する一本鎖抗体を結合させた抗体断片を作成し、アデノウイルスに結合させたのちに細胞に感染させたところ、CEA産生腫瘍に特異的に感染がおこり、その遺伝子導入の効率は標的化されていないアデノウイルスと同程度であった。このベクターでは本来のファイバーノブとCARとの接着の代わりにCEAに対する抗体断片とCEAの結合を経て感染したことが示唆された。この方法はCEA以外の腫瘍特異抗原にも応用可能で、癌組織に特異的に効率良く治療遺伝子を導入する優れた方法であると考える。