ABSTRACT 668(15-3)
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変異U1snRNA発現ベクターによる、HIV RNA代謝の阻害:人見嘉哲,加藤一喜,江角浩安 (国立がんセ・研・支所・がん治療開発)

Specific interference of HIV RNA splicing by hyperstable U1snRNA : Yoshiaki HITOMI,Kazuyoshi KATO, and Hiroyasu ESUMI (Investigative Treatment Div., Natl, Cancer Ctr. Res. Inst. East)

標的遺伝子の発現を抑制するために、種々のベクター系が開発されてきた。我々は、核内低分子RNAであるスプライシング因子U1snRNA遺伝子の変異体により、mRNA前駆体のスプライシングをターゲットとした遺伝子治療法の可能性を検討してきた。U1snRNAは、蛋白複合体として核内で安定に存在し、5'スプライス部位に相補的な5'端配列によりmRNA前駆体に結合する。そこで、HIVを標的遺伝子として、HIV RNA上に存在する5’スプライス部位に対して特異的に且つ非生理的に強く結合する種々のU1snRNA変異体を作製し、ウイルスRNA代謝に対する阻害効果を検討した。変異U1snRNA遺伝子を、HIVプロウイルスと共に培養細胞株SW480に一過性に導入し、HIV RNAの発現をノーザン法により検索した。その結果、Tat、Rev等の調節蛋白質をコードする約2KbのHIV mRNA群の著明な増加と、4Kb、9Kbに相当するmRNAの減少が見られた。HIV全RNA量に対する4-9KbmRNAの割合は、コントロールと比較して1/10程度まで低下していた。HIV RNAは、複雑なオルターナティブ・スプライシングを受け、ウイルス粒子の産生には、構造蛋白質をコードする4-9Kbに相当するRNA群と、9KbのウイルスRNAの産生が必須である。従って、変異U1snRNA発現ベクターを用いることで、HIV RNAスプライシングという全く新しい作用点から、ウイルスの産生を阻害できる可能性が明らかとなった。