ABSTRACT 680(15-4)
HST-1/FGF-4の分子制御による胚細胞腫瘍のin vitro増殖阻止: 落谷孝広1、浅野晃司2、高濱靖1、坂本裕美1、杉村隆1、寺田雅昭1(1国立がんセ・研・分子腫瘍、2慈恵会医大・泌尿器科)
Inhibition of in vitro growth of human germ cell tumor by antisense oligonucleotide and antagonist peptide for HST-1/FGF-4: Takahiro OCHIYA1, Kouji ASANO2, Yasushi TAKAHAMA1, Hiromi SAKAMOTO1, Takashi SUGIMURA1, Masaaki TERADA1 (1Genetics Div., Natl. Cancer Ctr. Res. Inst., 2Dept. Urology, Jikei Med. School)
[目的] FGF遺伝子ファミリーに属するHST-1(FGF-4)遺伝子はヒト精巣腫瘍やその細胞株で発現が上昇している。本研究では、HST-1遺伝子の発現制御やアンタゴニスト分子が、胚細胞腫瘍細胞の増殖抑制に効果的かどうかの検討を行った。[方法と結果] HST-1陽性ヒト精巣腫瘍細胞株(NEC-8)について、アンチセンス法、および分子内ペプチドによる細胞増殖の抑制の有無を検討した。まず、HST-1のmRNAと効果的に二重鎖を形成しうるアンチセンス核酸標的部位に対する5種類のアンセンスオリゴの内、1種類が、効果的にNEC-8細胞の増殖を抑制した。その効果は0.05 μMから1nMまでの間で濃度依存的であり、対照としたオリゴには同濃度での抑制効果は認められなかった。さらにHST-1分子のFGF受容体やヘパリン結合部位に特異的に結合するペプチドは、濃度依存的にNEC-8の増殖を抑制し、HST-1陰性の細胞に対しては無効であった。[結論・考察] HST-1特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドやオートクリンのループを断ち切るアンタゴニストとして働くペプチドは、精巣腫瘍に対する新しい治療法の一つになりうる可能性が示された。現在、in vivoでの腫瘍増殖抑制効果を検討している。