ABSTRACT 751(P1-7)
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乳酸鉄のF344ラットにおけるがん原性試験およびエストロジェン活性の検討:安原加壽雄,三森国敏,丸山聡,藤本成明,松井元,竹川潔,小野寺博志,高橋道人,広瀬雅雄1国立医衛研・病理, 2広島大・原医研)

Carcinogenicity study of iron lactate in F344 rats and determination of its estorogen activity: Kazuo YASUHARA1, Kunitoshi MITSUMORI1, Hazime MATSUI1, Satoshi MARUYAMA2, Nariaki FUJIMOTO2, Kiyoshi TAKEGAWA1, Hiroshi ONODERA1, Michihito TAKAHASHI1, Masao Hirose1, (Div. of Pathol., Natl. Inst. Hlth Sci., Res. Inst. Rad. Biol. Med. Hiroshima Univ.)

【目的】乳酸鉄は栄養強化用鉄剤として調整粉乳,小麦粉およびパンなどに広く使用されている食品添加物である.我々は乳酸鉄の催腫瘍性を検索する目的で,ラットを用いて104週間のがん原性試験を実施した.また,今回の実験で子宮内膜の過形成が有意に増加したことから,本物質のエストロジェン受容体への影響の有無についても検討した.
【材料および方法】6週齢のF344ラット雌雄各150匹を3群に分け,2%,1%および0%(対照群)の乳酸鉄を含有する粉末飼料を104週間自由に摂取させ,病理組織学的に検索した.また,MCF-7ヒト乳がん細胞あるいはMtT/Se下垂体腫瘍細胞によるエストロジェン活性の検討を行った.
【結果および考察】雌雄ともに用量に相関して体重の増加抑制が認められたが,生存率においては群間に明らかな差は認められなかった.組織学的に,対照群を含む各群に種々の腫瘍が認められたが,雄の2 %群で膵外分泌腺好酸性細胞過形成(0 %群4/49,2 %群13/49)が,雌の2 %群では子宮内膜過形成(0 %群3/50,2 %群9/49)が有意に増加した.エストロジェン活性の検討では乳酸鉄にエストロジェン受容体に対する作用は認められなかった.以上より,乳酸鉄には催腫瘍性はないことが示されたが,膵外分泌腺および子宮内膜に対する影響については今後さらなる検討が必要である.