ABSTRACT 762(P1-8)
 ポスターセッション一覧 トップ 


肝硬変、肝がんの発症とアセトアルデヒド代謝酵素Acetaldehyde Dehydrogenase 2 (ALDH2)の遺伝子多型性、飲酒歴との関連:松田範子、恩田昌彦、加藤俊二、吉田 寛、梅原松臣、松倉則夫、徳永 昭、田尻 孝、山下精彦(日本医大・1外)

Genetic Polymorphism of Acetaldehyde Dehydrogenase 2 Enzyme for Liver Cirrhosis and Liver Carcinogenesis: Noriko MATSUDA, Masahiko ONDA, Shunji KATO, Hiroshi YOSHIDA, Matsuomi UMEHARA, Norio MATSUKURA, Akira TOKUNAGA, Takashi TAJIRI and Kiyohiko YAMASHITA (First Dept. of Surgery, Nippon Medical School )

【目的と方法】アセトアルデヒド分解酵素ALDH2の遺伝子の多様性をPCR-制限酵素処理法にて判定し、酵素機能の個体差と飲酒歴が、肝硬変、肝がん発症にどのような影響をおよぼすかを肝硬変115例、肝癌75例、健常コントロール117例のケースコントロールスタディで検討した。
【結果】肝がんの発症は、酵素活性の欠落したALDH2-2遺伝子をホモでもつタイプ(2/2)が他の遺伝子タイプに比べ有意に多く(odds ratio: OR= 4.40: 1.48 - 13.1)、肝硬変の発症も多い(OR= 3.08, 95%CI: 1.06 - 8.95)。肝硬変から肝がんへの伸展の過程では、肝がん合併肝硬変症例でALDH2 2/2遺伝子タイプが、肝がん非合併肝硬変に比較し多く(p=0.13)、中でも2/2タイプの飲酒者は全例、肝がんを併発していたが(p<0.05)、非飲酒者ではこの傾向は認められない。
【結論】肝硬変、肝癌の発症は、ウイルス肝炎の感染とともにアセトアルデヒド分解能の欠落したALDH2-2の遺伝子をホモ接合体でもつ個体に多く、飲酒者はさらに肝癌発症の高危険度群であることがわかった。アルコール代謝の酵素機能の個体差、つまり遺伝的素因がウイルス肝炎の感染や飲酒習慣に加え、肝硬変、肝癌発症に関与している可能性が示唆された。