ABSTRACT 764(P1-8)
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ヒト CYP1B1 遺伝子多型と乳癌との関連性について:渡辺潤子, 末益公人2,東 靖宏2,川尻 要11埼玉がんセ・研,2埼玉がんセ・病院・乳外)

Relationship between CYP1B1 genetic polymorphism and breast cancer : Junko WATANABE1, Kimito SUEMASU2, Yasuhiro HIGASHI2, Kaname KAWAJIRI1 (1Saitama Cancer Center Research Inst., 2 Dept. Breast Sur. Clin. Saitama Cancer Center Hospital)

TCDD により誘導される CYP1B1 は CYP1A1 同様にベンゾピレンをはじめとして多くの芳香族炭化水素の代謝活性化に関与しており、その他にも内在性の基質としてエストロジェンを代謝することが知られている。昨年我々は CYP1B1 遺伝子の一塩基変化によるアミノ酸置換を伴う多型が 119番目(Ala-->Ser) と432番目(Leu-->Val) のアミノ酸残基に存在することを見出し、これらの多型と肺癌との関連性について検討した結果、Ala-Ser 多型においてSer 型 allele をもつ人に肺癌感受性が高い傾向があることを本学会で報告した(P=0.07)。
今回我々はエストロジェンと関わりの深い乳癌とCYP1B1遺伝子多型との関連性を調べる目的で健常者 361 名と乳癌患者 339 名における遺伝子型分布を比較した。その結果、Ser 型 allele をもつ人は有意に乳癌発症高危険度群であることが明らかとなった(カイ二乗=8.32; d.f.=2; P=0.016)。 119番目のアミノ酸残基は基質認識部位 SRS1 に位置しており、変異により CYP1B1 の基質認識に差異を生じる可能性があり、基質の種類により多型の影響も異なると考えられる。CYP1B1 遺伝子多型が乳癌発症に与える影響について、遺伝子型分布の比較とアミノ酸の異なる (Ala/Ser) CYP1B1 における酵素活性の差異を検討した結果を併せて報告する。