ABSTRACT 766(P1-8)
肺癌におけるGSTM1遺伝子欠損とk-ras遺伝子変異の相関:松添大助、川原克信、白日高歩(福岡大・医・2外)
Correlation between polymorphism of the glutathione s-transferase gene and k-ras gene mutation in lung cancer : Daisuke MATSUZOE, Katsunobu KAWAHARA, Takayuki SHIRAKUSA (2nd. Dept. Surg., Fukuoka Univ. Sch. Med.)
〔目的〕Glutathione s-transferase mu1 (GSTM1) 遺伝子欠損と喫煙は肺癌の発生に密接に関っている一方で、k-ras遺伝子変異は喫煙者に多く認められることが知られている。今回、GSTM1遺伝子欠損とk-ras遺伝子変異の相関を検討した。〔対象と方法〕当教室で切除した原発性肺癌319例について、凍結標本からgenomic DNAを抽出し、PCR法でGSTM1遺伝子の欠損を判定した。k-ras遺伝子変異はsequence specific oligonucleotide probeを用いたdot-blot hybridization 法でcodon 12, 13の変異を検索した。〔結果と考察〕GSTM1遺伝子は153例(48%)において欠損し、扁平上皮癌、喫煙者に欠損の頻度が高かった。一方、k-ras遺伝子は25例(7.8%)に変異が認められ、全例が喫煙者で、性差は認められなかった。またGSTM1(-)においてk-ras遺伝子変異をきたしている例が多く認められた。喫煙者におけるGSTM1(-)例ではベンツピレンから産生されるエポキシドを分解することができずこれによりDNAが障害を受け、その標的の一つがk-ras遺伝子である可能性が示唆された。