ABSTRACT 773(P1-8)
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太陽光の変異原性:根岸友惠, 望月美里, 豊島めぐみ, 滝波昇悟(岡山大・薬)

Somatic Cell Mutation Induced by Sunlight Exposure: Tomoe NEGISHI, Misato MOCHIZUKI, Megumi TOYOSHIMA, Shogo TAKINAMI (Fac. of Pharm. Sci., Okayama Univ.)

【目的】太陽光紫外線は皮膚発がんの一因と考えられている。我々はショウジョウバエ体細胞突然変異検出系を用いて、近紫外光領域の紫外線のうち 320 - 340 nm の光に突然変異誘起活性があることを明らかにした。今回は、太陽光への暴露による突然変異発現を観察し、太陽光シミュレーターを光源とした場合の変異原性と比較した。
【方法】ショウジョウバエ3齢幼虫をプラスチックシャーレに入れ、野外で太陽光に暴露した。太陽光シミュレーターの場合は約 70 cm の高さから光を照射した。暴露中はシャーレ内の温度を30℃以下に保つようにし、定期的に UVA、UVB 量を UVX Radiometer で測定した。暴露後、幼虫を培地に移し暗所で飼育し、羽化してきたハエの翅毛の形態変化を顕微鏡下で観察し、変異原性を検出した。
【結果、考察】太陽光暴露による変異原性は暴露時間に応じて増加した。同時期の晴れた日と曇った日では、紫外線量は晴れた日の方が 2 倍多かったが、変異原性には顕著な差は見られなかった。太陽光シュミレーターは太陽光自然暴露より短時間に強い紫外線を照射することができ、変異原性も 1.5 倍程度強かった。太陽光中のUVA、UVB それぞれの測定値から、人工光であるブラックライト(UVA)および健康ランプ(UVB)による変異原性と比較した場合、太陽光の変異原性はブラックライトの約 2 倍であり、健康ランプの約 1/50 であった。また紫外線の積算量の増加にもかかわらず、変異原性が 4 時間以降定常状態になる傾向が見られた。これらは用いたショウジョウバエが 光回復能を有していることから、光暴露中に DNA 傷害の生成と修復が平衡に達しているためと考えられる。さらに太陽光変異原性の季節変動を観測すると共に、この系をサンスクリーンの検索に用いることを検討している。