ABSTRACT 786(P1-9)
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A群色素性乾皮症遺伝子欠損マウス(XP mouse) を用いた発がん物質検索の有用性に関する研究:今井田克己1,2, 小川久美子2, 伊藤隆康2, 戸塚ゆ加里3, 若林敬二3, 田中亀代次4, 伊東信行2, 白井智之2 (1名古屋東市病院・病, 2名市大・医・1病理, 3国立がんセ・研・がん予防, 4阪大・細胞セ)

Application for in vivo bioassay of detecting carcinogens by XP knockout mouse: Katsumi IMAIDA1,2, Kumiko OGAWA2, Takayasu ITO2, Yukari TOTSUKA3, Keiji WAKABAYASHI3, Kiyoji TANAKA4, Nobuyuki ITO2, Tomoyuki SHIRAI2 (1Pathol., Higashi Munincipal Hosp. Nagoya, 21st Dept. Pathol., Nagoya City Univ. Med. Sch., 3Cancer Prev. Div., Natl. Cancer Ctr. Res. Inst., 4Inst. Mol. Cell Biol., Osaka Univ.)

A群色素性乾皮症遺伝子の knockout mouse は、DNA adductの除去修復能の低下により、発がん物質に対する感受性が高いことが予想される。そこで、このXP mouseを用いて、PhIPに対する感受性について検討した。[方法と結果] 1)長期投与試験:homoおよびwildのXP mouseの雌雄をそれぞれ2群に分け、40ppmのPhIP混餌食または基礎飼料を投与した。実験期間40週で屠殺剖検し、全身諸臓器を病理学的に検討した。その結果、homoのPhIP投与群については雌雄とも早期から死亡例が観察され、最終屠殺時には約20%の生存率のみであった。一方、wildのPhIP投与群は40週で100%生存していた。死因としてはPhIPによる毒性によるものと考えられた。腫瘍性病変としては、malignant lymphomaの発生が雌マウスに散在性に認められたが、その他の腫瘍性病変はみられなかった。2) 短期試験:homoおよびwildのXP mouseにPhIPを50mg/Kg体重を単回胃内強制投与し、その後1, 3および7日後に3匹づつ屠殺し、肝、大腸、肺のPhIP-DNA adductの検出を32P-ポストラベル法を用いて行った。さらに抗PhIP-DNA adduct antibodyを用いて各臓器を免疫組織学的に検討した。 その結果、PhIP-DNA adductはhomoではadduct量も多く、経時的なadductの修復も遅延する傾向が見られ、免疫染色を用いた結果でも同様の傾向が認められた。[考察] PhIP-DNA adductはXP mouseで高く、また、修復の遅延も認められた。しかし、このマウスはPhIPなど遺伝子毒性物質による毒性も強く、このXP mouseは種々の病変のメカニズムの追求には貴重な動物であるが、一般的な発がん物質の検索系としては、必ずしも適切ではないと考えられた。