ABSTRACT 796(P1-9)
化学発癌耐性ラット肝臓における脂質過酸化抑制とAlcohol dehydrogenase ならびに小胞体 Glutathione S-transferase の役割:東 胤昭(甲子園大・栄養)
High activities of alcohol dehydrogenases and microsomal glutathione S-transferase,and low lipid peroxidation in the liver of carcinogon-resistant rats:Taneaki HIGASHI
(Col.Nutr.,Koshi-en Univ.)
[目的]発表者らが近年開発した化学発癌耐性ラット(DRHラット)の発癌耐性機構に「脂質過酸化の抑制」が重要な位置を占めるという作業仮説を検証するため、親株であるDonryuラットを対照として、DRHラット肝臓について、二つの酵素;(1)CytosolのAlcohol dehydrogenase(ADH)(2)Microsome局在Glutathione S-transferase(MGST)の活性を測定し、それらが、脂質過酸化による組織傷害の防御に関与している可能性を検討した。[方法](1)ADH活性測定のため成熟雄ラット肝臓CytosolのBiogel P-6カラム素通り画分を酵素標品とし、基質としてEthanol(Acetaldehyde)またはn-Octanol(n-Octanal)を用いた。(2)等張KClで洗浄した肝臓Microsomeを用い、1-Chloro-2,4-dinitrobenzeneとGSHを基質としてMGST活性を測定した。(3)Microsomeの脂質過酸化は、Thiobarbituric acid-reactive substance(TBARS)の生成速度により比較した。[結果](1)ADHの比活性は、いずれの基質を用いた場合にもDRH>Donryuであり、その差はAlcohol生成方向で測定した時により大であり、また一夜絶食した後でより明瞭に観察された。(2)MGSTの比活性はDRH>Donryuであるが、両者の差は予めMicrosomeをN-ethylmaleimideで処理して活性化することにより一層著しくなった。(3)NADPH(またはAscorbate)+Fe3+存在下のMicrosomeの脂質過酸化は、MGST活性の阻害剤であるBromosulfophthaleinの添加によって促進されたが、GSHの同時添加によって抑制された。[結論](1)Esterbauerらの主張に沿って考えると、DRH肝臓CytosolはAldehydeの毒性軽減という点で有利な性質を備えている。(2)実験結果はMGSTが脂質過酸化抑制因子である可能性を示唆しているが、抑制機構に「GST活性」が不可欠かどうかは不明である。