ABSTRACT 799(P1-10)
ビタミン E 欠乏群ラットへの Iron-nitrilotriacetate 投与による腎組織中 8-hydroxydeoxyguanosine と Apoptosis: 江口 香、秋山 隆、岡田 茂 ( 岡山大・医・一病理)
Iron-nitrilotriacetate induced 8-Hydroxydeoxyguanosine and apoptosis in renal tissue in vitamin E deficient rats : Kaori EGUCHI, Takashi AKIYAMA, Shigeru OKADA ( 1st. Dept. of Pathol., Okayama Univ., Med. School.)
[目的] 鉄キレート化合物である鉄ニトリロ三酢酸 (Fe-NTA) をラット、マウスの腹腔内に投与すると、活性酸素、フリーラジカル産生を介して腎組織に脂質過酸化、組織損傷、アポトーシス、8-hydroxydeoxyguanosine(8-OHdG) の産生を引き起こし、また Fe-NTA の反復投与後長期経過すると高率に腎癌が発生することは報告した。これに対し抗酸化剤であるビタミン E (VE) が抑制効果を発揮することも先に報告した。今回私達はVE 欠乏時の腎組織における 8-OHdG 産生とアポトーシスとを検討した。[方法] 3 週齢の雄 Wistar ラットを VE 欠乏食群、対照食群、過剰食群の 3 群に分け、6 週間飼育後予備実験として Fe-NTA 3-8mg鉄/kgBW 腹腔内注射し生存率をみた。 Fe-NTA 8mg鉄/kgBW 投与後 1 時間でそれぞれ屠殺し、肝、腎、血清中 VE 含量の測定と、腎の組織学的観察 (H.E.染色、アポトーシス観察のための TUNEL 染色、抗 8-OHdG 抗体による免疫染色)、HPLC-ECD による腎組織中 8-OHdG の測定を行った。
[結果と考察] VE 欠乏群では Fe-NTA 投与後、強い溶血を起こし何れも 3.5 時間以内に死亡した。6 週間飼育後の VE 含量は VE 欠乏食群で有意な低下を認めた。腎組織では VE 欠乏群、対照食群ともに H.E. と TUNEL 染色で皮質近位尿細管上皮の核にアポトーシスに相当する変化を認めた。腎組織中 8-OHdG は対照群に比し VE 過剰群では上昇が抑制されたが、VE 欠乏群と対照食群では有意差は見られなかった。これらの結果より、Fe-NTA 投与により VE 欠乏食群では強い溶血を起こし個体の死を招くが、アポトーシスの誘導、8-OHdG 産生には対照食群との間に有意差を認めない事が確認された。