ABSTRACT 803(P1-10)
ヘテロサイクリックアミンMeIQxによる酸化的DNA損傷の機構: 村田真理子、川西正祐(三重大・医・衛生)
Mechanism of oxidative DNA damage induced by heterocyclic amine MeIQx: Mariko MURATA and Shosuke KAWANISHI (Dept.of Hygiene, Mie Univ.)
[目的] ヘテロサイクリックアミン 2-amino-3,8-dimethylimidazo[4,5-f] quinoxaline (MeIQx) は加熱食品中から検出され、動物での発癌性が認められている。従来MeIQxは肝臓で代謝されDNA付加体を形成し発がんに至ると考えられてきた。しかし、最近、MeIQxを投与したラットの肝臓で8-oxodGが検出され、また、MeIQx の発がん性が抗酸化剤により抑制されることが報告された。本研究では、ヒトp53 がん抑制遺伝子より単離したDNAを用いてMeIQxの代謝物N-hydroxy MeIQx (MeIQx(NHOH))により酸化的DNA損傷の機構を検討した。[方法・結果] (1)リン酸緩衝液中、32PでラベルしたDNAとMeIQx(NHOH)、 CuCl2 あるいはNADHを37℃で反応し、ピペリジン処理後アクリルアミドゲル電気泳動を行い、オートラジオグラムにてDNA損傷性を検討した。その結果、MeIQx(NHOH)はCu(II)存在下で濃度依存的にDNA損傷性が増した。このDNA損傷は、カタラーゼあるいはバソキュプロイン(Cu(I)イオンのキレート剤)によって抑制されたことから、過酸化水素とCu(I)のDNA損傷への関与が示された。NADHを加えると劇的にDNA損傷が増加した。 (2)Maxam-Gilbert 法を併用し、DNA 損傷の塩基特異性を解析した結果、チミンあるいはシトシンの損傷が目立った。 (3)酸化的DNA損傷の指標である8-oxodGは、calf thymus DNAを使用し、同様の条件で反応させ、電気化学検出器付HPLCにて定量した。8-oxodGは、Cu(II)存在下でMeIQx(NHOH)により生成され、NADH添加により劇的に増加した。[考察] MeIQxの水酸化体代謝物が金属イオンおよび生体内還元物質の存在下でredox cycleを形成し、活性酸素を生成して酸化的DNA損傷をもたらすと考えられた。本研究は三重大 小林三希子との共同研究である。