ABSTRACT 805(P1-10)
チトクロームP450が生成する活性酸素による DNA損傷について:今岡 進、南山幸子、舩江良彦(大阪市大・医)
DNA oxidation by active oxygen species produced by cytochrome P450: Susumu IMAOKA, Yukiko MINAMIYAMA, Yoshihiko FUNAE (Osaka City Univ. Med. Sch.)
【目的】スーパーオキシドやヒドロキシルラジカルなどいわゆる活性酸素は、細胞内の膜構造の酸化やDNAの酸化を引き起こし、細胞障害や癌のイニシエーションの原因ともなる。モノオキシゲナーゼであるチトクロームP450は小胞体膜に存在し活性酸素を生成することが知られている。さらにまた、P450は核膜にも存在することが報告され、生成した活性酸素が容易に遺伝子の損傷を引き起こすことが推測される。P450はスーパーファミリーを形成しており、多種多様な分子種が存在している。そこで、活性酸素生成の分子種特異性とそれが細胞、特にDNAにおよぼす影響を検討した。
【方法】精製ラットP450を用いてESRを測定し、生成する活性酸素の種類および量を検討した。さらにP450による酸素消費量は酸素電極で測定した。DNA酸化のマーカーである8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG)は、HPLCで分離の後電気化学検出によって測定した。
【結果及び考察】10種類のラットのP450について検討した結果、CYP1A2, 2B1, 2C11, 3A2が高いヒドロキシルラジカル生成活性を示した。フェノバルビタール(PB)をラットに投与すると肝臓のCYP2B1, 3A2含量は顕著に増加した。PB投与によってラット肝臓に脂質過酸化物である4-hydroxyalkenalや8-OHdGの顕著な増加が見られた。一方8-OHdG修復酵素である8-oxo-dGTPaseの発現はPBによって変化しなかった。この結果はPBなどによってP450が誘導されることで、細胞の脂質過酸化やDNA損傷が引き起こされることを示唆している。