ABSTRACT 806(P1-10)
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8-ヒドロキシグアニンのゲノム塩基配列レベルでの解析:野本実、河野公俊、葛西宏(産業医大・医・分子生物、産業生態)

Analysis of 8-hydroxyguanine by genomic sequencing: Minoru NOMOTO1, Kimitoshi KOHNO1, Hiroshi KASAI2 (1Dept. of mol. biol., 2Dept. of environ. oncol., Univ. of Occup. & Environ. Health)

[目的] DNAの酸化的塩基損傷は、塩基変異や発癌を誘起すると考えられている。そこで、代表的な酸化的塩基損傷である 8-ヒドロキシグアニン (8-OH-Gua) の生成及び修復を、ゲノムDNAを対象として、塩基配列レベルの高解像能で解析する。
[方法] 鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)を腹腔内投与したラットから、経時的に腎臓を摘出し、ゲノムDNAを調製した。ピペリジン処理により 8-OH-Gua 部位を化学切断後、Ligation Mediated PCR (LM-PCR) 法を用いて、切断部位を解析した。
[結果] 癌抑制遺伝子 p53 のホット・スポット・コドンを含む翻訳領域や、熱ショック蛋白質遺伝子 (HSP70.1) プロモーター領域には、8-OH-Gua に相当する切断シグナルは得られなかったが、Na, K-ATPase α1 遺伝子プロモーター領域では、両鎖ともに 8-OH-Gua を検出した。それらのピペリジンによる主要切断部位は、Fapy DNA Glycosylase による酵素的切断においても再現された。8-OH-Gua は、特定の GG 及び GGG 配列の部位に生成していた。一方、この α1 遺伝子の翻訳領域には、調べた限り 8-OH-Gua を検出しなかった。現在、上記以外の遺伝子についても解析中であり、併せて報告したい。
[結論] Fe-NTA による 8-OH-Gua の生成は、ゲノム全体に均一に分布するのではなく、特定の遺伝子の特定の領域に集中することが示唆された。