ABSTRACT 808(P1-10)
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哺乳類細胞における酸化的DNA損傷と遺伝子変異:中島円, 竹内亨, 森本兼曩(阪大・医・環境医学)

Kinds of the mutation by the induced oxidative DNA damage in V79 cells: Madoka NAKAJIMA, Toru TAKEUCHI, Kanehisa MORIMOTO (Dept.of Hygiene and Preventive Med., Osaka University School of Medcine)

【はじめに】これまで代表的な酸化的DNA損傷でありcell freeの実験系において変異誘発能が確認されている8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8OHdG)を指標として、活性酸素の産生がDNA損傷及び発がんに及ぼす影響について検討してきた。その中で我々は細胞内に8OHdGを効率的に誘発する系を確立し、8OHdG誘発量と細胞の変異誘発能との関連性を検討したところ、変異誘発頻度は損傷誘発量の増加に伴って高くはならない結果を得た(昨年度本学会報告)。そこで同じ系において生じた変異を分子レベルで解析し、哺乳類細胞における誘発された8OHdGと変異スペクトルとの関連性について考察した。
【方法】光増感剤(NP-III)とUV照射により8OHdGを誘発させたV79細胞でHPRT変異試験を行い、変異クロ−ンのhprt遺伝子についてRT-PCRにてcDNAを作成した後、ダイレクトシークエンス法を用いて塩基配列解析を行った。
【結果・考察】NP-IIIにより生じた変異の種類を見ると2塩基置換やdeletionの頻度が高く、それらがT:Aの位置に起こる頻度が高い。この結果は従来報告されている8OHdGにより生じる変異とは異なるものである。このことから活性酸素の影響については、8OHdGのみでなくその他の損傷や損傷生成機構、さらには損傷修復効率やhprt以外の遺伝子における変異などを含め細胞全体の事象として捉えることの必要性が示唆される。