ABSTRACT 810(P1-10)
大腸菌MutT蛋白質の各種酸化的損傷ヌクレオチドに対する分解活性の比較:藤川 勝義1, 紙谷 浩之1, 藤井 喜充2, 薬師寺 浩之2, 中別府 雄作2, 葛西 宏1(1産業医大・産業生態研、2九大・生医研)
Low Activity of MutT Protein for 2-OH-dATP, 5-CHO-dUTP and 5-OH-dCTP:Katsuyoshi Fujikawa1, Hiroyuki Kamiya1, Yoshimitsu Fujii2, Hiroyuki Yakushiji2, Yusaku Nakabeppu2, Hiroshi Kasai1 (1Inst. Indust. Ecolg. Sci., Univ. Occup. Environ. Hlth., 2Dept.of Biochemistry, Med.Inst.of Bioreg., Kyushu Univ.)
活性酸素による DNA やその前駆体の損傷は、自然突然変異、発癌等の様々な過程に深く関与していると考えられている。中でも、 8-OH-dGTP, 2-OH-dATP, 5-CHO-dUTP, 5-OH-dCTP はこれまでの研究から、自然突然変異をひき起こす主要な酸化ヌクレオチドと考えられる1)。
今回我々は 、8-OH-dGTP をヌクレオチドプールから除去することで突然変異を抑制している大腸菌MutT蛋白質が、これら酸化ヌクレオチドを分解するかどうかを調べた。精製した各種酸化ヌクレオチドとMutT蛋白質をインキュベートし、各々の分解速度を測定した。その結果、8-OH-dGTP のみが速やかに分解され、 5-CHO-dUTP, 5-OH-dCTP 及び 2-OH-dATP は未修飾dGTPと同程度にしか分解されなかった。
この結果から、MutT蛋白質は酸化的ヌクレオチドの中でも 8-OH-dGTP に高度な特異性を示すことが明らかになった。大腸菌において、各々の酸化ヌクレオチドに対応する特異的な分解酵素の存在が推定される。現在ヒトの MutT ホモログである、hMTH1 蛋白質についても同様に解析中である。
1) N. Murata-Kamiya et al. J. Radiat. Res., 38: 121-131 (1997)