ABSTRACT 811(P1-10)
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発がんプロモーター 過酸化ベンゾイルによる酸化的 DNA 損傷の分子機構:及川伸二,川西正祐(三重大・医・衛生)

Molecular mechanism of oxidative DNA damage induced by benzoyl peroxide as a tumor promoter: Shinji OIKAWA and Shosuke KAWANISHI (Dept. Hygiene, Mie Univ. Sch. Med.)

【目的】発がんプロモーター 過酸化ベンゾイル (BzPO) は食品添加物やアクネの治療薬に用いられている。本研究において BzPO による DNA 損傷機構を詳細に検討した。【方法】DNA 損傷の解析には32P でラベルを行った DNA フラグメント(c-Ha-ras-1 がん原遺伝子及び p53 がん抑制遺伝子)を用いてリン酸緩衝液 中、BzPO と15μM CuCl を 37℃ で 90 分間反応させ、Maxam-Gilbert 法を併用することにより DNA 損傷性と塩基特異性を検討した。8-oxo-7,8-dihydro-2'-deoxyguanosine (8-oxodG) は電気化学検出器付 HPLC で定量した。またスピントラップ剤を用いて DNA 損傷を誘発する活性種を ESR により同定した。【結果・考察】Cu(I) 存在下において BzPO は濃度依存的に DNA を損傷し、損傷の塩基特異性は G が 2 つ以上隣接している配列の 5' 側の G が強く損傷された。また、その損傷は dimethyl sulfoxide では抑制されたがカタラーゼでは抑制されなかった。BzPO は Cu(I) 存在下で酸化的 DNA 損傷の指標のひとつである 8-oxodG を増加させた。ESR の解析結果より、BzPO と Cu(I) の反応からフェニールラジカルが生成している可能性が示唆された。以上の結果から BzPO は Cu(I) 存在下において酸化的に DNA を損傷することが明らかになり、またその活性種はフェニールラジカルであると考えられる。従って、BzPO のプロモーター作用にはラジカルによる酸化的機構が関与している可能性が示唆されたため、さらなる研究が必要と思われる。本研究は三重大学、築留英之との共同研究である。