ABSTRACT 813(P1-10)
チロシン代謝物ホモゲンチジン酸による酸化的DNA損傷: 平工雄介、川西正祐 (三重大・医・衛生)
Oxidative DNA damage induced by homogentisic acid, a tyrosine metabolite: Yusuke HIRAKU and Shosuke KAWANISHI (Dept. of Hygiene, Mie Univ. Sch. Med.)
[目的] 高蛋白質摂取およびアミノ酸代謝異常による発がんの可能性がこれまで指摘されてきたが、その機構は現在でも明らかではない。一つの可能性としてアミノ酸代謝物の関与が考えられる。ある種のチロシン血症では肝腫瘍の罹患率が増加する。チロシン代謝物のp-ヒドロキシフェニル乳酸は実験動物で肝腫瘍を起こす。チロシンおよびp-ヒドロキシフェニル乳酸はホモゲンチジン酸(HGA)に代謝されるが、HGAは変異原性を示すことが報告されている。従って、我々はHGAによるDNA損傷機構について検討した。[方法] (1)p53がん抑制遺伝子の単離DNA断片を32Pでラベルしたものをリン酸緩衝液中でHGA 、金属化合物と共に反応させ、DNA損傷について検討した。(2)酸化的DNA 損傷の指標である8-oxodGを電気化学検出器付きHPLCを用いて定量した。[結果] HGAは Cu(II) の存在下で、特にチミンおよびシトシンで DNA 損傷を起こした。DNA損傷はHGAの濃度および反応時間に依存して増加し、また過酸化水素とCu(I)の関与が示唆された。8-OxodG生成量はCu(II)の存在下でHGAの濃度に依存して増加した。 [考察] HGAはCu(II)の存在下でセミキノンラジカル、次いでベンゾキノン誘導体に酸化され、その過程で生成された 過酸化水素とCu(I)とが相互作用して銅−酸素複合体が形成され、DNA損傷をもたらすと考えられる。 我々は既に、HGA以外にもいくつかのアミノ酸代謝物が同様の機構で酸化的DNA損傷を起こすことを見い出しており、以上のような観点から食生活と発がんとの関連についてさらに研究を行う必要がある。
[本研究は山崎正禎(三重大・医)との共同研究である。]