ABSTRACT 814(P1-10)
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酸化的損傷におけるDNA構造の役割:田和 理市(京都薬大)

Role of DNA structure in oxidative DNA damage: Riichi TAWA (Dept. of Anal. and Bioinorg. Chem., Kyoto Pharmaceutical University)

[目的]哺乳類の出生前後期における組織細胞では、DNA複製や遺伝子発現が活発に生じ、ドメイン構造をもつクロマチンがほぐれる。一方、抗酸化酵素の活性変化により生成した過酸化水素(H2O2)が生体内金属と反応して・OHを生成することから、この時期の組織DNAはラジカル損傷を受けやすい環境にある。本研究では、出生を控えた胎仔と成熟(アダルト)マウスの肝細胞核がCu(II)あるいはFc(III)イオンとH2O2との反応によってどの程度損傷を受けるか、DNAの構造変化による・OHに対する感受性変化を比較検討した。また抗酸化物質と・OHとの反応について検討した。[結果](1)胎仔とアダルトの肝組織核では、Fc(III)-H2O2よりもCu(II)-H2O2によりDNA損傷を顕著に受けた。特に胎仔により強いDNA切断が見られた。(2)還元型グルタチオンはCu(II)-H2O2によるDNA切断に対して抑制的に、Fe(III)-H2O2に対して促進的に作用した。他のSH化合物はいずれも抗酸化作用を示した。アスコルビン酸はいずれの反応においても促進的に作用した。(3)胎仔の方が、アダルトよりもクロマチン・コア部分で明らかなDNAのヒストンからの乖離が観察された。(4)クロマチン活性領域のDNAは、胎仔の方がアダルトよりも低メチル化を示した。出生を控えた胎仔の方がアダルトよりも肝組織クロマチンの・OHに対する感受性が高い状態にあるが、核内に含まれる還元性物質のみでは、・OHに対する感受性の違いを説明づけることは不可能である。