ABSTRACT 827(P1-12)
MutaTM Mouseにおける各種制がん剤の突然変異誘発性とcII突然変異のスペクトル:王 雪, 鈴木孝昌, 林 真, 祖父尼俊雄(国立医衛研・変異遺伝)
Mutant frequencies and mutational spectra of lambda cII gene induced by anticancer drugs in MutaTM Mouse: Xue WANG, Takayoshi SUZUKI, Makoto HAYASHI, Toshio SOFUNI (Div. of Genet. and Mutagen., Natl. Inst. Health Sci.)
【目的】制がん剤は一般に強い小核誘発性を示す. これは制がん剤による二次発がんを考える上でも注目すべき点である. 今回制がん剤の遺伝子突然変異誘発性を明らかにすることを目的とし, MutaTM MouseのcII遺伝子を標的にして突然変異誘発性を塩基配列のレベルで検討した. 【方法】マウス(8-10週齢雄)にcisplatin (2 mg/kg), etoposide (15 mg/kg), bleomycin (10 mg/kg), Ara-C (100 mg/kg), 6-TG (10 mg/kg), procarbazine (500 mg/kg)を5回(procarbazineのみ単回)腹腔内投与した. 最終投与14日後にマウスを屠殺し, 各臓器よりDNAを抽出し, λパッケジングにより導入遺伝子をファージへ回収した. lacZとcII変異体をポジティブセレクション法により選別し, それぞれ変異頻度を算出した. また, 得られたcII変異体について塩基配列の解析を行った. 【結果・考察】cIIの変異頻度はcisplatinとprocarbazine処理群では, それぞれ対照群より約2.4倍(肺)〜3.8倍(骨髄), および約2.9倍(肺)〜9倍(骨髄)上昇した. 同様にlacZの変異頻度も骨髄で上昇した. Cisplatinにより誘発された突然変異では, G:C→T:A transversionが骨髄と肺において増加しており, また, 肺ではフレームシフトと欠失型変異が全体の33%を占めていた. 一方, procarbazine処理により誘発された突然変異は主にA:T塩基対に起きており, 中でもA:T→T:A transversionが骨髄で全体の69%, 肺で全体の27%を占めた. これらの結果は, procarbazineとcisplatinが生体において染色体異常に加えて点突然変異をも誘発する特徴を持つことを示している.